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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
24
2018

怒り

2016年 / 日本 / 監督:李相日、原作:吉田修一 / サスペンス / 142分
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盲目的に信ずることは正しいことか。
【あらすじ】
3人の中に犯人がいます。



【感想】
八王子で起きた凄惨な殺人事件。犯行現場には「怒」という文字が残されていた。東京、千葉、沖縄を舞台に展開する3つの物語。前歴不詳の3人の男はいずれも怪しく見える。犯人探しの面白さに加え、人を信じることの難しさが問われる作品。俳優陣がとても豪華で演技も自然に見えましたが、なぜかあまり面白くなかったという。理解力が足りんのかな。

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あんまりね、犯人探しという視線で観てなかったこともあり、犯人がわかっても「ふーん」という感じでした。ここに出てくるのは前歴不詳の3人の男たちで、それぞれの物語が興味深い。特に良かったのが渡辺謙、宮崎あおい親子。

宮崎あおいはちょっと頭の弱い子で、家出したと思ったらいつの間にか風俗で働いているという、ちょっと困った人。純粋で無防備で、簡単に人に利用されてしまう危うい感じが絶妙。いつもニコニコしているのだけど、その笑顔がどこか痛々しくもある。

渡辺謙は風俗で働く娘を連れ戻すが、怒れないんですよね。娘は頭が弱いから仕方ないという諦めがある。一方、親戚である池脇千鶴は本気で宮崎あおいを怒るのだけど、彼女は宮崎あおいを対等に見ているからこそ怒る。渡辺謙はもう完全に諦めちゃっているんですね。

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宮崎あおい(左)は、渡辺謙の元で働きだした前歴不詳の松山ケンイチ(右)と付き合いだす。池脇千鶴はちょっと松山ケンイチを警戒している。渡辺謙はというと、一応警戒しているのだけど、頭が弱い娘を引き取ってくれる男などいないと思い、黙認している。松山ケンイチはかなり怪しいわけで、何かの事件に関わっている可能性もある。極端なことを言えば、渡辺謙は相手が犯罪者でもいいと考えている節がある。

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池脇千鶴は、「(宮崎あおいの)頭が弱いから幸せになれない、まともな男は相手にしないと決めつけてない?」と渡辺謙に詰め寄る。ここら辺のねえ、千鶴の指摘の鋭さ。人を責める役をさせると池脇千鶴は本当に上手いんですよねえ。ぐうの音も出ない謙さんであった。

でも、ちょっと渡辺謙の気持ちもわかる。娘の幸せを願うあまり、怪しい男でも受け入れてしまおうかなあという気の迷い。この人ね、娘がかわいくて心配で仕方ないんですよね。そういった気持ちの揺れ具合が伝わってきました。

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エリートサラリーマン妻夫木(右)の元に転がり込んできた謎の男綾野剛(左)。妻夫木さんというと爽やかで優しいイメージでしたが、この作品ではちょっとオラオラなゲイの人、いわゆるタチの側。対して綾野剛はゲイでネコの側。特に綾野剛さんは一目でネコとわかる感じがすごい。タチとネコがわからない人は、お父さんかお母さんに聞いてみよう!

本当にどうでもいいことを書きますが、芸人の猫ひろしさんは俳優の舘ひろしさんがいるから、タチとネコで猫ひろしと付けたのではないか。だとするとかなり捻った名前。全然違うかもしれない。

妻夫木さんも綾野剛さんも普段とはかなり違う役柄で面白かったです。幅が広がっていいですね。

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沖縄に引っ越してきた広瀬すず(左)。そして無人島に住みついた怪しい男、森山未來(右)。森山未來さんも優柔不断で優しい男みたいな役柄が多かったですが、この作品ではワイルドかつ豹変する男を演じていました。

で、ちょっとよくわからなかったのが犯人の動機。動機は、犯人の知り合いの犯罪者によって語られる。真夏、派遣会社の適当な連絡のおかげで現場にたどり着けなかった犯人。電話の向こうでは担当者の嘲笑うような声が聞こえていた。犯人が途方に暮れていたところ一人の女に声をかけられる。彼女は犯人が道に迷ったかと思い、麦茶をくれるんですね。犯人は同情されたことを怒り、彼女を殺してしまう。彼女にはなんの過失もない。

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で、この犯人の知り合いは「(犯人は)人を見下してギリギリのところを保って生きてきたのに、同情されたら、そりゃ殺しちゃいますよね」みたいなことを言う。ここら辺がねえ、よくわからないのだった。同情されたからって殺すかなあ。それほどこじらせてるということなのだろうけど。

またこの犯人の知り合いがねえ、なんでそこまでわかるの? ってぐらい犯人の気持ちを語る。犯人に動機を告白させるとなると陳腐になるから、犯人の知り合いに語らせるという方法をとったのだろう。でも、犯人のかなり複雑な心情を正確に推し量るものだから「エスパー?」ってなる。

とても簡単に共感できるような動機じゃないのだ。この犯人の知り合いの設定も、喋り方からすれば無学無教養で、犯人と同じく社会的には底辺に位置するはずなのに、語る内容は的確で洞察力がある。そこがチグハグに映るのだ。

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3つの物語のうち2つについては犯人とは関係のない話になる。そして前歴不詳の男たちにはそれぞれ事情があり、彼らを信じられなかった周囲の者たちは深く反省するんですね。ただねえ、これも反省すべきなのかなあと思ってしまう。

そもそも誰も彼も怪しいんです。その怪しさに目をつぶり「あの人を信頼できないなんて、自分はどうしようもない奴だ」ってなるかなあという。そりゃ、前歴不詳だし疑って当然というか、疑ってしまったとしても「ドンマイ」で済む話に思えるのだけど。むしろ信頼するほうがおかしいのでは、などと書くと私の性格の悪さが浮き彫りになりそうですが。そういう点で今一つ共感できなかったように思います。


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