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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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2019

少年

1969年 / 日本 / 監督:大島渚 / ドラマ / 105分
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経済成長に置いてけぼりにされた弱者。
【あらすじ】
家族であたり屋をやっています。



【感想】
あたり屋をしながら全国を放浪する家族を描いた作品。ウィキペディアを見ると、1966年に大阪西成警察署に逮捕された高知県出身のあたり屋夫婦の事件が基になっているという。子供にあたり屋役をやらせ全国各地を転々としながら計47件の事件を起こした。『万引き家族』という映画がありましたが、この映画はさしづめ『あたり屋家族』でしょうか。

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あたり屋の少年(阿部哲夫、左)の表情があまり変わらないんですよね。感情の起伏が乏しい様子ががすばらしかった。心が死んでしまったあたり屋の子という感じがした。阿部さんは養護施設に収容されていた実際の孤児だそうで、その生い立ちが独特な雰囲気を醸し出しているのでしょう。

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食事の場面が多いのが印象的。何か意味があるのかな。まっとうな家族関係は崩壊しているのだけど食べるためには共に暮らさざるを得ない、食べざるを得ないとか。

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傷痍軍人である渡辺文雄(左から3人目)がまあ悪い人でねえ。私は中年以降の渡辺文雄さんしかリアルタイムで観ていなくて、知的で真面目という印象しかなかった。東大卒だし。でも、若い頃だと悪役も多いんですね。目つきが悪い。いいぞお。

今回は、あたり屋行為を命令するひどい父親。子供があたり屋をやると、まずは監督不行き届きということで妻をどなりつける。「おまえが付いていながら何をやっとるんだ!」と挨拶代わりのビンタをかまして相手をビビらせるという。最悪じゃんかあ! たまらないですね。しかも、妻と子にあたり屋をやらせるくせに、自分は絶対にやらない。これは重要な点かもしれない。

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映画のオープニングで役者名が日の丸と共に出てくる。この日の丸は黒く塗られており、喪中のような印象。こんな国は死んだも同然、こんな国は死んでしまえということかな。この映画ではとにかく国旗がよく出る。

渡辺文雄は傷痍軍人役であり、戦争で大怪我を負った。国という絶対的強者から弱者である渡辺は傷つけられ、なんの救済もされていない。高度経済成長で国は湧きたち繁栄を謳歌しているが、自分たちは置いてけぼりだ。皺寄せはもっとも弱い自分に来ている。

この強者(国)と弱者(渡辺)の関係が、家族内にもみられる。家族内では渡辺は暴力を振るい、あたり屋行為を指示する絶対的強者となる。弱者は妻と子なんですね。もっとも弱い者に皺寄せがくる様子、強者と弱者の対比が巧みに描写されている。

これは社会的弱者を描いた国家批判の映画なのかと思って観ていた。だが、上の日の丸に戻りますが、これは戦地に赴く兵隊への寄せ書きに見える。寄せ書きをした人々は内心では戦争に反対したかもしれないが、寄せ書きをすることで兵隊を応援して送り出してしまっている。庶民は国による被害者でありつつも加害者でもあるというか。これは必ずしも国だけを悪としたわけではなく、庶民にもその責任の一端はあったということを示しているようにも感じる。

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役者がみんな良かったですね。大島渚監督の奥さん(小山明子、左から二人目)も、あたり屋家族の妻(内縁?)として出ています。きれいな人ですね。

印象的なのは、少年が持つ空想(宇宙人や忍者がどうだとか)を妻がすべて否定する場面。この歳の子供なら空想をして遊ぶことも許されるだろうけど、彼にはあたり屋という現実しかない。あたり屋で食べていくしかないのだ。やがて少年は指示もされないのに、みずからあたり屋をおこなっていく。北海道で、この家族に巻き込まれて一人の少女が交通事故で亡くなる。そのとき少年はひとすじの涙を流す。感情が死んでしまった彼に、善悪の価値観が戻ったところで映画は終わる。

大島渚監督の作品は「日本春歌孝」しか観たことがなく、わけがわからんという感じでしたが、これはだいぶわかりやすい。面白かったです。国や社会から虐げられた弱者は、犯罪という形で社会に復讐するしかなかったのかもしれない。

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