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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
08
2019

渇き。

2014年 / 日本 / 監督:中島哲也、原作:深町秋生 / サスペンス / 118分
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美しい愛娘は天使か悪魔か。
【あらすじ】
元刑事が行方不明になった娘を探しています。



【感想】
原作は深町秋生さんの「果てしなき渇き」。原作未読です。娯楽ものであるにもかかわらず、ちょっとストーリーがわかりにくかったです。失踪した美少女、小松菜奈さんが魅力的でそれだけでも観る価値がありました。残酷な描写も多く、賛否分かれる内容だと思います。私はちょっと苦手かなあ。人物像が変わっていて面白かったです。

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高校生の娘、加奈子が失踪。元・妻に頼まれて娘の行方を追うことになった父親・藤島昭和(役所広司)。役所さんがねえ、常に具合が悪そう。でもよく暴れる。昭和(あきかず)という名前がまず面白くて、昭和時代の悪い部分を詰め合わせた人物に見える。そんな詰め合わせ、いらん‥‥。野獣のように暴力的で自分を省みないところがある。

妻を寝取った男の車に突っ込み、車から男を引きずり出して殴り倒す。さらに男に馬乗りになって殴る殴る。「おまえ、ハゲのくせに!」って、ハゲと不倫は関係ないと思いますが。ひどいお人。笑ってしまった。

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失踪した娘・加奈子(小松菜奈)には不思議な魅力があった。加奈子はボーイフレンドが自殺に追い込まれた復讐として、周囲の人間を破滅させていく。そのためには手段を選ばない。善悪を越え、超然としたキャラクターに見えるものの、本当に超然としているならばそもそも復讐は考えない気もするのだ。

この映画がわかりにくいのは権力者であるチャンの正体のせいかも。事件があると週刊誌などで取り上げられる「仁風林」「楼蘭」などの怪しげなサロンがある。一般人は入ることができない。政財界や有名人など影響力のある人々を賄賂、性接待、ドラッグなどで取り込み、弱味を握って思い通りに操ろうとする。チャンもこういったサロンの元締めであり、加奈子はサロンの中心メンバーでみずからも売春を行い、スタッフの勧誘も行っていた。彼女は、このサロンの利用者たちに性接待の写真を送り付けたことで権力者たちの怒りを買うことになる。彼らの人生を滅茶苦茶にすることが加奈子の復讐だった。

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加奈子を演じた小松菜奈さんが魅力的で、女優としてもっとも美しい時期を捉えることができたように見える。加奈子には善悪の観念が欠落している。人がひどい目にあったり、殺されることについても何も考えていないような。悪人とは、また違うように思う。悪人には悪人としての自覚があるだろうが加奈子はその自覚がないのではないか。だから良心も痛まない。自分がやっていることは悪ですらないのだから。

「なぜ人を殺してはいけないか」という問いについては「自分が殺されたら嫌だ」とか「自分の親しい人間が殺されるのは嫌だ」という答えがある。それは人の間で最低限の共有されうるルールとして、法律で殺人は禁止されている。だが、加奈子は殺しても殺されてもかまわないと考えている。だから公平である。人生がただ面白ければいいという状態になっていて、それが加奈子がしばしば口にする「超ウケる」ではないか。

両親は離婚し、父親と近親相姦し、ボーイフレンドは自殺。彼女のまっとうな感覚は崩壊した。彼女にとって人生の価値は面白いか面白くないか、その一点に到達してしまった。だからボーイフレンドの復讐というのも、正直なところしっくりこなかったのだ。感情が死んでしまった加奈子にとって復讐というのも理由付けの一つにすぎず、いい大人が右往左往するのを観たかっただけなのかもしれない。慌てふためく様子が「超ウケる」という。クラスメイトの絆創膏を無理にはがすのも、痛がる顔が楽しいからだろう。

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それは妻夫木聡さんが演じる刑事も同じかもしれない。彼も善悪の価値感は崩壊していて物事が面白ければよいように見える。加奈子の男版がこの刑事なのかな。この人が昭和の運転する車にはねられるところは笑ってしまった。豪快に飛んでましたね。

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で、よくわからんのが昭和なのだった。とにかく滅茶苦茶でねえ。元妻や犯人の妻をレイプしたり、娘の死体を掘り返そうとしたり。昭和なりに美しい家庭を取り戻そうとしていたのかもしれない。「渇き」の正体は愛情なのかな。家族の愛情を取り戻したいものの、やってることは真逆でどうしようもない方向にいっている。とにかくいつも血だらけなのをなんとかしなさいよ‥‥。

彼が娘の死体を執拗に探したのはなぜなのだろう。化け物になってしまった娘をあらためて自分で殺したいのか、それとも謝りたかったのか、最後まで気持ちがわからなかった。なんとも奇妙な映画でした。人の感想が聞いてみたくなる映画です。


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