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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
10
2019

ハクソー・リッジ

HACKSAW RIDGE / 2016年 / アメリカ / 監督:メル・ギブソン / 実在の人物を基にした作品、戦争 / 139分
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戦場で銃を持たない男は聖者か狂人か。
【あらすじ】
信仰があるので銃を持たずに戦争に行く。



【感想】
アルコール依存症、DV、人種差別発言など何かと問題の多いメル・ギブソン監督。でもメル・ギブソン、本当にねえ、監督をやるとすごい作品を撮りますよね。ただの危ないおっちゃんではなかった。面白かったですよ。

メル・ギブソン作品は信仰のあり方についてを説いているものが多いように思う。戦争版『沈黙』とでもいうような。

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完全なフィクションならば「そんな奴いるわけない」で済む話なのですが、まさか実在の人物とは。デズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は第二次大戦中、信仰から銃を持つことを拒否しながらも衛生兵として沖縄戦に参加、約75名の負傷者(日本兵含む)を救助した。

戦争場面は後半で、前半は奥さんとの出会いが丁寧に描かれている。ちょっと変わっている人なんですよね。奥さんを口説く場面でも何か普通ではない様子がある。声をかけてずっとニヤニヤしているような。尋常ではないサイコパス感。

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これ、アンドリュー・ガーフィールドだから単なるニヤニヤで済まされるが、人によっては通報されるやつである。なんやかんやで奥さんを射止め、その後、軍隊へ入隊。信仰から銃を持てないので衛生兵として志願する。

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アメリカのすごいところはこういった「良心的兵役拒否者」でも、一応は兵士として認められるところだと思います。形式さえ整っていれば、とりあえずは許可されるという。日本ならば、兵士が銃を持たないと主張すれば拷問とか、投獄とか、そういった扱いでもおかしくない。とりあえず裁判にまでなるところはアメリカらしい。

もっともデズモンドも最初からすんなり認められたわけではなく、仲間からリンチされ、上官からさまざまな嫌がらせを受け、さらには命令拒否ということで軍事裁判にまでかけられる。このとき、妻は「(銃を)撃たなくても持つだけでいいから」と説得する。普通の人ならば、じゃあ形だけ、と妥協してしまうだろう。デズモンドはそういった妥協は一切しない。信仰とはなんだろうと思わされる。

最初はデズモンドのことを狂人を見るような目で見ていました。だけど、映画が進むにつれてその認識が揺らぎ始める。狂人というのは、自分と異なる意見を持つ少数派について、多数派がつけた蔑称というだけかもしれない。おかしいのは自分のほうかもしれないとも。「世間」や「常識」という言葉もそうだけど、ただ数が多いだけでそれが正しいとは限らない。

デズモンドはどんなに責められても銃を手にしない。戦時下で銃を取らないなんて、周りから批難されるし圧力はかかるしで、銃を手にするほうがよっぽど簡単なんですよね。彼のような人ばかりならば戦争は起きないですむかもしれない。

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戦闘場面の迫力はすさまじかったです。火炎放射器で火だるまになる日本兵の姿が執拗に映される。仲間の下半身が吹き飛んで即死し、その上半身を盾にして敵に突っ込んで行く人も。そんなことある~? という。あまりにすごすぎて笑ってしまった。

デズモンドは日本軍との銃撃戦で崖の上に取り残される。彼は銃を持たないから隠れているしかない。日本兵はアメリカ兵の生き残りがいないか確かめるため、倒れているアメリカ兵を銃剣で突き刺していく。普通のアクション映画ならば、デズモンドが銃を取り、日本兵を撃ち殺してヒーローになるのだろう。彼は殺されるアメリカ兵を見ているしかないんですね。ここがとても印象的でした。銃を持たないという、きれいごとに思える行為の代償というか。すさまじい無力感があったのだと思える。

銃を持たないことが正しいことかどうか、私にはよくわからない。デズモンドは衛生兵だから、銃を持っている仲間を助けるわけで、その仲間は撃ち合いによって相手を殺すことになる。彼が直接銃を撃たなくても間接的に殺しの手助けをしている。そんなことはデズモンドにもわかっているだろう。それでも彼は銃を取らない。そこが重要に思えるのだ。

ロープを体に結びつけ、断崖から負傷者を下ろして救助活動だけをしていく。

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自分が正しいと思うことを一切の妥協なく行える姿はすばらしい。ついにデズモンドも負傷して担架で移送される。だが彼の表情はとても満ち足りたものに見えた。神がデズモンドを見守っていたと信じているような。

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デズモンドには良心的兵役拒否者として史上初の名誉勲章(軍人最高位の勲章)が授与された。第二次大戦での良心的兵役拒否者での受賞はデズモンドのみ。とても面白い映画でした。お薦めです。


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