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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
23
2019

さよなら、人類

En duva satt pa en gren och funderade pa tillvaron / 2014年  / スウェーデン、ドイツ、ノルウェー、フランス、デンマーク / 監督:ロイ・アンダーソン / コメディ / 101分
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さまざまな読み方を許す懐の深さ。
【あらすじ】
どこか物悲しいコント。



【感想】
ゲラゲラ笑うでもなく、淡々とすすんでいくコント。おかしみと物悲しさ、北欧独特の雰囲気があります。モンティ・パイソンやヤン・シュヴァンクマイエルが好きな人は好きそう。

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このねえ、いかにもうだつのあがらない佇まい。一目でわかる駄目セールスマン感。そもそもやる気のある人が一人も出てこないのだけど。ただ立っているという図も多くて、それだけでなんとなくおかしみがある。短編コントを集めたような映画で、どこがどうおかしいかはよくわかりません。この雰囲気が好きか嫌いかに拠るのかも。

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どこまでが計算なのか、観ていてわからなくなる。フラメンコ教室では、若い男子生徒につきっきりのフラメンコ教師が踊りの指導にかこつけて生徒(若い男)の体を触りまくるのだ。この場面は、おばちゃんの単なるセクハラとだけ観ても面白いのだけど、逆の場合はどうなのだろうと想像してみたくなる。

若い女子生徒がいて中年の男性教師が体を触りまくったとしたらどうなのか。画面が過度に性的になってしまいそうだし、支配や抑圧も感じて不愉快になりそうな気がする。だが、なぜ男女が入れ替わると場面が成立しにくくなるのか。男性優位という社会状況が根底にあるからかもしれない。べつに監督はそういったことを意図したわけではないのかもしれないが、読もうとすればどこまでも読めるような作品が多い。

しかし、無理に斜めから観なくても、ただセクハラを繰り返す太ったおばちゃんは面白い。

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ロープに繋がれた黒人奴隷らしき人々が、金属のドラムの中に入っていく。彼らが入り終えると兵士はドラムを火であぶり出す。

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ドラムの中は黒人の絶叫で満たされているのだろうが、ドラムにたどりつけられたラッパからは荘厳なメロディーが響きだす。『ファラリスの牡牛』という処刑道具に似ていますね。黒人の犠牲の上に先進国の社会が繁栄を誇っているという見方もできるし、ただ単に面白いからやってみたのかもしれんけど。

このドラムには『BOLIDEN』という文字が彫られている。検索してみるとBOLIDENとはスウェーデンのストックホルムにある鉱山会社で銅・亜鉛・鉛の製錬、リサイクルを行う会社でした。BOLIDEN社はこの銅で作られた殺人ドラムを製造しただけなのか、それとも南米(BOLIDEN社が活動している)で黒人を犠牲にして仕事をした過去などがあったのか。

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ドラムから流れるメロディーに導かれるように、正面の建物からは裕福そうな老人たちが出てくる。主人公は彼らの持つグラスに酒を注いでまわる。老いや主人公の行動が何を示すかも一切語られない。誰かの犠牲の上に繁栄を手にしても、それは人間的には死も同然という意味で老人を出したのだろうか。主人公はつまらないジョークグッズを売る人間だったが、それでもこういった人々にワインを注いでまわる(悪事に加担する)よりは今の生き方のほうがマシということでこの場面を入れたのだろうか。はっきりと解が示されるわけではなく、観客の想像力によって点数が変わりそうな映画です。

明らかにハリウッドの文法とは違う文法で作られており、それも面白い。たまには変わった映画を観たいという人は是非。


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