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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
29
2019

ザ・ナイト・オブ

THE NIGHT OF / 2016年 / アメリカ / 監督:リチャード・プライス、スティーヴン・ザイリアン、原作:ピーター・モファット / サスペンス / 全8話
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【あらすじ】
殺人事件の容疑者になった。



【感想】
最近、アメリカのドラマを二つ観た。『エクスパンス 巨獣めざめる』『ウエストワールド』どちらも壮大で舞台が大きい。目を引き付ける壮麗なCG、大掛かりな謎、そういったものはたしかに魅力的で面白い。いかにもアメリカドラマという。この『ザ・ナイト・オブ』はそういった壮大さとは対照的に一つの殺人事件に関わった人々を丹念に描写していく。全8話の構成で、たった1件しか殺人事件が起きない。でも、その裏側では多くの人がさまざまな思惑で動いているのだ。恐ろしい陰謀があるわけでも、どんでん返しがあるわけでもない。しかし、こういうミクロな視点に着目したドラマもあるのだなと、アメリカのドラマの幅を感じさせられました。

ニューヨークに住むパキスタン系の学生ナズ・カーン(リズ・アーメッド)。うらぶれた弁護士のストーンとインド系の女性弁護士チャンドラは、ナズの無罪を証明しようと奔走する。ナズは刑務所(刑の確定前でもアメリカは刑務所に収監される?)に収監され、生きのびるために刑務所のルールに順応していく。

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この映画には完全な人間は出てこない。みなどこか愚かさや弱さ、孤独を抱えている。きれいな人間など誰もいなくて、弁護士のストーンはナズに同情して彼を助けたわけではなく、少しでもお金を取ろうと考えていた。また、チャンドラの事務所はナズがパキスタン系ということもあり、マイノリティの味方をする事務所として知名度アップを図ろうと目論んでいる。ナズも模範的で真面目な青年かと思いきや、過去に2度暴力事件を起こしていたことが明らかになる。誰しも完璧ではなく、隠された面を持っている。

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潔白なのは猫だけである。にゃーん。

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猫アレルギーながら猫を引き取ることになったストーン弁護士。お金欲しさと、かすかに残る正義感のバランスがいい。

彼は皮膚病で苦しんでいる。治療のためにいろんな医者に頼るものの、なかなか治療がうまくいかない。怪しげな漢方? の店で処方された薬でいっときは良くなるものの症状はすぐに悪化してしまう。誰を信じて良いのかわからないとか、誰が正しいことを言っているのかわからないというのは、皮膚病の治療だけでなく、この事件そのものを表している。ナズが刑務所で最初に信用した男も、豹変してナズを裏切るし、同じことを物語っている。人が持つ得体の知れなさや不透明さがうまく描かれている。

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また、ナズを強引に有罪にしようとする検事や刑事たち。彼らはナズをギリギリまで追い込むものの、最後は良心に従って真犯人の追及をする。みなそれぞれの思惑があり、善良なだけ、潔癖なだけという人はほとんど出ない。だが、人にはいろいろな面があり、ときに善良さが垣間見える瞬間がある。弱き者、忘れ去られた者たちへの救済が描かれるところに一縷の希望を感じる。

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ナズは刑務所に収監された当初は真面目な青年だったものの、筋トレしてムキムキになるわ、タトゥーは入れるわ、麻薬の運び係になるわで、もうあの頃の真面目なナズではないのです‥‥。そうしなければ刑務所内では生き残れないのだ。それもどうかと思うんだけど。とにかく刑務所内が地獄すぎる。この治安の悪さ、なんとかならんのかねー。

最初にガソリンスタンドでトイレを借りるときも、店員は鍵を貸してくれるんですよね。普段はトイレに鍵がかかっているのだろう。そういった細かい所にも治安の悪さを感じてしまう。

Amazonのレビューを見ると、ナズが犯人なら返り血を浴びてないのが変で警察がそのことに気づかないのがおかしいというものがあった。返り血自体はクッションや毛布をあててからナイフを突き刺せば防ぐことができるのではないか。そのことに作品内でまったく言及されていないのはまずいかもしれない。しかし、その一点だけで評価を下げるのも惜しいように思うのだ。作っている側にしてみれば、それぐらい簡単にわかるよね、と思って省略したのかもしれないが。

とても地味ですが、人の内面や背景をしっかりと描いている。観終わった今、彼女の孤独について思いを巡らせてしまう。偶然が積み重なってこの冤罪事件は起きたけれど、人々が当たり前の思いやりや気遣いを持っていれば実はこの事件は防げたのではないか。

すばらしいトリックや胸のすくような場面はないけれど、こうやって一つの事件を丹念に追っていく作品もいいですね。そして猫がかわいい。

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