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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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2019

ある戦争

KRIGEN / 2015年 / デンマーク、フランス / 監督:トビアス・リンホルム / 戦争、ドラマ /115分
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どっちに行こうが地獄。
【あらすじ】
戦争犯罪をして裁判にかけられる。



【感想】
自分と仲間を守るための決断が戦争犯罪として糾弾される。反戦メッセージの強い作品ですね。これねえ、どっちに転んでも地獄というか。主人公の行為に責任を問うのはあまりに酷なものの、だけどその決断を支持するならば民間人の犠牲者は増えてしまう。答えはないし、無理に答えを出すのならば「戦争そのものが悪」ということになる。そんなことはみんなわかっていて、わかっていて、なお戦争をしなければならない状況があった上で、この問題をどう考えるかというと、答えられる者は存在しないのではないか。

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アフガニスタンのヘルマンド州に駐留し、タリバンとの戦闘を指揮するデンマーク陸軍中隊の指揮官クラウス・M・ペデルセン(ピルウ・アスベック、右)。ある村を訪れたとき、タリバンから激しい攻撃を受ける。部下は負傷するが、敵の攻撃位置はつかめない。クラウスは部隊を守るために、敵の位置を確認せずに航空支援を要請する。

クラウスの要請によって空爆が行われ、結果としてクラウスの部隊は危機を脱することができた。しかし、その航空支援により、民間人11人が巻き込まれ死亡する。クラウスは帰国後に、位置未確認の空爆で民間人11人を殺害したことで起訴される。

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クラウスのおかれた状況は悲惨なんですよね。目の前で仲間は撃たれるわ、RPGでも撃ち込まれたのか壁が崩れるほどの攻撃を受けて、状況の確認も難しい。敵を確認しての空爆要請が順序として正しいのはもちろんだけど、そんなことをしていたら全滅しかねない。勘でもいいから、空爆を指示してなんとか脱出の機会を得たいというのは当たり前に思えるのだ。もう死にかけてるし。

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法務官はクラウスのおかれた絶望的な状況体験などは顧みず、クラウスを追い詰める。クラウスたちに行われた苛烈な攻撃をみると、敵の位置確認など不可能だと擁護したくなる。彼女の態度は冷酷だが、それでも戦争犯罪を防ぐためにはやはり仕方のないことに思える。こういう人もいなくてはならない。

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クラウスは卑怯でも残酷でもない。11人の民間人を犠牲にしたこともそうだが、犠牲者の中に自分の子供と同じぐらいの子供がいたことを知り苦しむ。敵の位置を確かめずに空爆を要請した罪を認めることを妻に告げるが、子育てに悩む妻から猛反対されてしまう。もう、どうすりゃいいんだ‥‥という。クラウスは刑務所に行く覚悟だったが、家族のために罪を否認することを選択する。

そもそも彼の行為が罪かどうかも難しい。11人が死んでいなければ、彼は裁かれることはなかったわけだし。じゃあ、位置を確認してから空爆要請すれば? というのは正しい手続きだけど、その手続きに従うことはあの状況では彼と部隊に死ねということに等しい。

裁判は、同部隊の仲間が「敵の位置確認をしていた」という偽証をしたことで無罪となる。

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自宅で無邪気に振る舞うクラウスの子供の足と、空爆によって殺害された子供の足の映像が重なる。苦い終わり方でした。

戦争行為そのものが悪であるということはわかりきっている。戦争行為を遂行すれば当然、こういった戦争犯罪も発生する。これを個人の罪として問うていいものかとも思うし、だが一切の行為を黙認すれば手当たりしだいの空爆が行われて民間人の犠牲は増えてしまう。民間人の犠牲が増えれば、遺族は駐留軍を憎み、結果として民間人からテロリストが生まれることになるだろう。駐留軍が撤退すれば? というのが理想だし、当然の疑問だけど、ここではタリバンが民間人にテロリストになることを強要する場面が描かれており、撤退が最善とも言い切れないのだ。どうすりゃいいのよ、という話だけどどうしようもない。すっきりと解決できる人などいない。どうにもできない中で、一つ一つ対処していくしかない、という現実があるだけなのだ。


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