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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
13
2019

LOGAN / ローガン

LOGAN / 2017年 / アメリカ / 監督:ジェームズ・マンゴールド / SF、ヒーロー / 137分
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異能の苦しみとその末路。
【あらすじ】
ミュータントたちの逃避行。



【感想】
Xメンのウルヴァリンことローガンが主役の作品です。人間にはない超人的な力を使って悪を打倒するという華やかなヒーロー。それはヒーローの一面ではあるけれど、Xメンシリーズは超人的な力を持つがゆえの苦悩、マイノリティ差別などのマイナス面をテーマとしてきた。

本作はXメンからも離れ、ローガンという一人の男がミュータントの少女を連れて逃げるロードムービーのような作り。Xメンシリーズは大作になることが多いのだけど、本作はとてもこぢんまりとしている。そんでローガンがやたら具合悪そう。もうローガンだけじゃなくて、みんな具合悪そうだし、悲しいのだよ。

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だいたいこんな感じが多い。ヨヨヨ‥‥。髭モジャモジャおじさん。

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そして、ローガンの逃避行の相棒となるプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)。頭は切れるし、頼りになる最強の能力者でしたが、なんとこの世界(2029年)では認知症を発症しており、薬を切らすと周りの人を麻痺させるような強烈な現象を起こしてしまう。悲しみの迷惑おじいちゃんと化していた。

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もう一人の主人公ともいえるのが、ミュータントである少女ローラ(ダフネ・キーン)。どこかさびしげな表情がとてもいいんですね。それだけではなく決然とした意志と凶暴性も併せ持っている。アクションもすばらしかったです。

ローラは、ウルヴァリンの遺伝子から作られたクローンで、ウルヴァリン同様に両手の甲にアダマンチウムの爪、さらに足にも爪が埋め込まれており、殺人マシーンとして育てられた。そのせいで善悪の価値観が滅茶苦茶。店内で会計前にお菓子を食べてしまい、注意しようとした店員を殺しかける。とんでもないお子。

ローラのような子供のミュータントを兵器として育てることに疑問を持った研究所職員たちは、研究所からミュータントたちを逃亡させる。ローラも逃げ出すことに成功するが、組織からは命を狙われることに。

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Xメンはとても長いシリーズとなった。チャールズ・エグゼビア(車椅子の男性)を演じたパトリック・スチュワートがだいぶお歳を召しているからか、一度終わりをきちんと描こうとしたのかな。ずいぶんと悲しい形になってしまった。もっとも、このシリーズは平気で過去にさかのぼるから、また違った形で続編は可能でしょうけども。

とてものん気なことをいえば、みんな幸せに暮らしていてほしかったのです。ローガンはリムジンの運転手として必死にお金を貯める一方、酒に溺れている。チャールズは認知症で、他人に迷惑をかけないように巨大な鉄の筒のようなところに閉じ込められている。なんだこの暮らし。みな、若い頃はそれなりに楽しそうだったじゃんかあ‥‥。才能の巨大さに押しつぶされた人たちを見るような気持ち。

Xメンを観るたびに、才能を持つ者の悲劇は感じていましたが、今回はねえ、「人生どうしてこうなった」というか、ずいぶん悲しいですよ。人生、いいときばかりではない。

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Xメンという異能集団は悪から人類を救ってきたものの、その異能さゆえに人類から恐れられ差別されてきた。才能があってもちっとも幸せじゃないという。それどころか、ローガンは手に埋め込まれたアダマンチウムの毒によって体を蝕まれているし、チャールズは認知症で苦しみ、超能力が仇となり、周囲に迷惑をかけている。ローラは一般常識すらなく、周りとうまくコミュニケーションがとれていない。

才能が持つ負の面が強く押し出されているように感じた。この映画の伝えたいことではないのだろうけれど、才能について考えさせられた。Xメンほどではないにしろ、スポーツ選手や芸能人、経営者にはその才能を利用しようといろんな人が寄って来る。才能は富をもたらすこともあるけれど、人格を変えたり、人生を狂わすこともある。

ローラは才能を伸ばす英才教育を受けたものの、世間をまったく知らず買い物一つできないし、コミュニケーションもうまく取れない。才能が刀のようなものだとしたら鞘がなければならない。鞘というのが人格で、昔の人がいう「立派な人になりなさい」というのは鞘を作れということなのかとも思う。今はあまり言いませんが。

なぜかと言えば立派な人間というのがお金にならないからだと思う。それならば刀の部分を鍛えたほうがいい、ということなのではないか。刀はお金になる。プログラミングや外国語を学ばせたり、学歴の高い人間を作るほうが収入に繋がる。才能はお金を産むためのもので、お金がなければ人は幸せになれないという考え方もあるのだろう。鞘を持たずに剥き身の刀を持つ人は、その磨かれた刀で人を傷つけることをためらわない。

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もう一つ印象的だったのは劇中で使われた西部劇『シェーン』のセリフ。

「人の生き方は決まっている。変えることはできない。俺も変わろうとしたが、一度人を殺したものはもう元には戻れない。正しくても人殺しの烙印を打たれる。もう谷から銃は消えた

ローガンやチャールズは理由に正当性はあったが多くの人を殺してきた。正当防衛は法律でも認められているが、はたして法律が許せばすべて問題がないかといえばそうも思えない。強盗に襲われたとして、強盗の命を奪ってしまったとしても、人の命を奪ったことで損なわれる何かはあるように思うのだ。じゃあ、強盗に黙って殺されればいいのかといえば、もちろんそんなことはないのだけど。ないにしろですね、何かが重大に変わってしまっていて、それはもうどうしようもない。理由は有れど、人を殺したということは消しようもない。

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もう一つ気になったのが、逃避行の途中、ローガン達に助けられた畜産農家の家族。チャールズの能力で逃げ出した動物たちが帰ってくる。それをきっかけに夕食をご馳走になり、彼らの家に泊めてもらうことに。

ローガンはそもそも夕食を断っていたが、チャールズは申し出を受けるようローガンを促す。ローガンは無愛想に見えて、自分たちが関わり合いになって家族に迷惑がかかることを恐れていた。だけどチャールズの態度こそ重要なものに思える。人との関りを断ってはならないという。ローガン達を泊めたことが原因で、結果として家族は組織から殺されてしまうけども。ひどい話。だが、ローラやローガンが人との関りの大事さを知るのはこの家族との出会いなんですよね。

家族が惨殺され、生きのびたお父さんはローガンがミュータントだと知ると、彼を撃とうとする。引き金を引いたものの弾は出なかったのだけど。ここで引き金を引いたことに残酷さを感じさせる。どこまでも差別は消えない。ううう。ここまでローガンを痛めつけるのかわいそ‥‥。

ヒュー・ジャックマンはローガン(ウルヴァリン)を17年も演じてきたんですね。それこそ分身のようなものだろう。チャールズ(プロフェッサーX)を演じたパトリック・スチュワートもでしょうけど。ローガンの墓標には十字架を傾けた「X」という文字が作られて映画は終わる。長かった物語もついに一つの終わりを迎えた。いい映画だと思います。しかし、あまりにもさびしい終わり方に感じた。


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