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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
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2019

一人っ子の国

ONE CHILD NATION / 2019年 / アメリカ / 監督:ナンフー・ワン、ジリアン・チャン / ドキュメンタリー / 88分
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【あらすじ】
一人っ子政策の影に何があったのか。



【感想】
1979年から2015年まで中国で行われていた人口抑制のための一人っ子政策。中国生まれのワン・ナンフー監督はアメリカで子供を産んだ。出産をきっかけに一人っ子政策に興味を持ち、親や親族に話を聞いて回ることに。監督の子供時代、中国では一人っ子政策が行われていた。

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本当に恐ろしいドキュメンタリーで、観ていて動悸がするような作品でした。こういった感覚はインドネシアの虐殺を描いたドキュメンタリー『アクト・オブ・キリング』以来かも。すごい作品でした。

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話をしてくれた親、親戚、助産師、村長など、みな、ごく普通の人なんですね。そんな人々が子供を路上に放置して殺したとか、女の子は捨てたとか、妊婦をみんなで抑えつけて強制的に中絶させた、不妊手術を強引に行った、一人っ子政策に従わない人の家を壊した、などの話を隠す様子もなく語る。もう観ていてクラクラくるのだ。なんの繋がりもない私ですらそうなのだから、監督は相当な衝撃を受けたのではないか。

彼女は長女だから殺されなかったが、もし二番目に生まれていたらこの世にいなかったかもしれない。自分の親族たちが子供を捨てたことをごく普通に語る恐ろしさ。一歩間違えば、目の前でにこやかに話している人が自分のことを‥‥そう考えると監督はどんな気持ちで話を聞いていたのだろう。彼女はアメリカに行ったから、一人っ子政策の影で行われた殺人の異常さがわかるが、手を下した人々はなぜか今一つピンと来てないようにも見える。それとも現実と向き合うことを拒否しているのだろうか。

もし仮に自分が罪を犯したとしたら、それが法的に罪に問われなかったとしても人にペラペラ話せないように思う。彼らの口から出るのは一様に「仕方がなかった」という言葉なんですね。あれは国から押し付けられたから、自分たちに一切責任はないという気持ちなのかもしれない。たしかに共産党に逆らうことはできない。そんなことをすれば刑務所に入れられる。むしろ、彼らは国が推進した政策に従順に従ってきた模範的な国民だし、表彰を受けている人もいる。2015年までは、彼らは正しかったわけで、誰からも責められるいわれはないのだ。一人っ子政策が終わった現在でも、あれは必要な政策だったと口々に正当化する姿が恐ろしくもある。

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結局、言論の自由がないことに原因があるように思える。党が間違えた選択をしたとき、一切の批判が許されない。一人っ子政策は廃止されたが、エンディングでは今度は二人以上の子を持つことを党が奨励している様子が映し出される。一人っ子政策のときも同じような宣伝をしていたわけだが‥‥。

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ユーモラスなはずが、もはやホラーにしか見えないという。

人はあまりにも強引に抑えつけられると考えることをやめてしまうのだろうか。一度、体制が完成してしまえば、その支配を覆すことは難しい。言論の自由がないことの恐ろしさを改めて感じた。それにしても、支配層の中でも子供を複数作った人もいたはずである。そういった人たちは、自分の子供を殺したのだろうか。苦さが残る作品。民主主義が最良の政治体制であるとは思わないけれど、根本的な問題は中国が民主化しない限り、解決しないのかもしれません。

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