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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
10
2020

殿、利息でござる

2016年 / 日本 / 監督:中村義洋、原作:磯田道史 / 江戸時代、コメディ、実際に起きた出来事を基にした物語 / 129分 
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【あらすじ】
殿様に金を貸して利子をとりたい。


【感想】
タイトルやジャケットがコメディ色が強いので、江戸時代が舞台のコメディ『超高速参勤交代』のような作品かと思って観ました。全然違いました。落語の人情噺を思わせる内容。とてもいい作品でした。

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1766(明和3年)の仙台藩の宿場町、吉岡宿。吉岡宿には、宿場町間の物資の輸送を行う「伝馬役」が課せられていた。伝馬役にかかる人足、馬などの費用に藩の助けはない。吉岡宿の町人たちが費用を負担していたが、町人は生活に困窮し町では夜逃げが相次いでいた。町の窮状を憂いていた穀田屋十三郎(阿部サダヲ、下左)は、京都から帰ってきたばかりの茶師、菅原屋篤平治(瑛太、下右)に相談する。

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菅原屋からは無謀とも言える提案がなされる。町の有力者たちが銭を出し合って千両(現在で3億円)を作り、その金を藩に貸し付けて利息をとって伝馬役の費用にあてるという案だった。

人に知られずに良いことをするという意味の言葉に陰徳というものがある。今は死語かもしれない。志がとても高いんですよね。町のためにお金を出しあった人々は、思い上がらないようにこの善行を他言することを禁ずる。寄合では上座に座らないという取り決めもする。何もそこまでと思うのだけど。社会がうまく回るためには、こういった自己犠牲を厭わない人々の献身があってこそなのかもしれない。

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仙台藩の出入司(財政担当者)を務める萱場(松田龍平、右)がまたいいんですよね。表情一つ変えず、町人たちの申し出をはねつける冷酷な官吏。悪役がこれでもかというぐらい憎々しいからこそ、庶民側に感情移入できるというもの。松田龍平がねえ、本当に顔面を思いっきり踏んでやりたいぐらい憎たらしいのだ。すばらしいですよ。いい役者だなあ。

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また、冷酷な金貸しを装いつつ、店をつぶしてでも宿場を救おうとした甚内(妻夫木聡、右)の心意気がたまらないですね。わけあって兄と疎遠になり、それでも何一つ言い訳をするでもなく、誤解されたままにやるべきことを黙々と行う。心打たれる場面。いつもの妻夫木さんとは少し違う寡黙で穏やかな佇まいが良かったです。また役者としての階段を一段上がられましたな(何様)。

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町人たちの訴えに耳を貸した武士たちもそれぞれ良かった。また、仙台藩藩主としてフィギュアスケーターの羽生結弦選手が出ているのですが、ピタリと役にはまっているのがすごい。役者にまったく見劣りせず、堂々として気品がある。なんでもできるのね。

実話が基になっているということに驚く。人々の善意が繋がって大きなことを為し得たという実に後味のいい作品でした。善行を人に言わないという姿勢が美しいですね。現代のSNSやYouTubeやブログという発信していく文化が悪いということではない。情報を共有して楽しみつつ、こうした陰徳を積むという美しい行為も、矛盾なく両立できるのではないか。陰徳を積むという言葉を死語にはしたくないものです。


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