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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
09
2020

ウインド・リバー

WIND RIVER / 2017年 / イギリス、カナダ、アメリカ / 監督:テイラー・シェリダン / サスペンス / 107分 
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雪山は秘密を知っている。
【あらすじ】
ネイティブアメリカン保留地での殺人を捜査する。



【感想】
脚本は、メキシコ国境地帯での麻薬戦争をとりあげた『ボーダーライン』のテイラー・シェリダン。『ボーダーライン』『ウインド・リバー』どちらも土地に特殊性がある。その土地での掟が重視され、中央から来た人間の常識などまったく通用しないのだ。

今作は、ワイオミング州にあるネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバーが舞台。「保留地」と「居留地」について同じような意味に解釈していました。それでもいいのだけど一応。wikipediaには以下の記述があります。

「リザベーション」は、現在では「居留地」と表されることが多いが、本来の意味としては「保留地」、つまり「インディアンの故国として白人が保障してとっておいた(リザーブした)土地である。これは、とりもなおさず、いずれ「保留」を解消するという意味合いも含んでいる。

白人がネイティブ・アメリカンを強制的に移住させて封じ込めた土地になる。ワイオミング州の人口は約56万人でアメリカの州の中で最も少ない。人口密度は2人/km2で、アメリカの中で2番目に少ない。過去の最低気温はリバーサイドで記録されたー54度。人が暮らすことを拒むような厳しい自然に囲まれた過酷な地。また、ずいぶんな所に押し込めたなという。

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そんな雪深い地で、ネイティブ・アメリカンの娘が殺される。

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FBIから派遣されたのは捜査経験も乏しく、頼りない捜査官ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン、左)。ジェーンは捜査の手伝いを、地元の凄腕ハンター、コリー・ランバート(ジェレミー・レナー、右)に依頼する。よく見るとこの二人、アベンジャーズチームなのだ。超能力を操るスカーレット・ウィッチと、腕っぷしは弱いが頭の回転はいいホーク・アイですよ。静かに興奮した。こんなところで共演が観られるなんて。

もうねえ、ハンターのコリーが実に渋くて頼り甲斐のあるオッサンで、た、たまらん‥‥。ちょっと陰気なホーク・アイという感じ。隠れたところから超威力のライフルで悪い奴を撃ちまくるぞお。ずるい。

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FBIの新人捜査官ジェーン。温暖なフロリダ出身。彼女はキャリアも浅いし、ウインド・リバーについて何も知らない。直観だけで邁進していく感じが微笑ましい。天然にも見えるぞ。

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サスペンス作品なのだけど、犯人などにひねりはなくてあっさりと描かれている。それよりも、なぜこういった犯罪が起き続けるのかを静かに描いているのが興味深い。

監察医の検死によると、殺されたのは現地のネイティブ・アメリカンの女性ナタリー。彼女はレイプされた跡があり、-30度の気温の中、裸足で何キロも歩いて死亡している。彼女が犯人からの逃走中に死亡したことは明白ながら、直接的な死因は肺出血となった。-30度の中、冷気を吸い込むと肺は凍り、血を吐き、肺は破裂するという。

死因が他殺ではなかったため、ジェーンはFBIの専門チームを応援に呼ぶことができなかった。いくらなんでもという理由だが、ルールはルールなのだ。そこでジェーンは土地の事情に詳しいハンター、コリーに捜査の協力を求めた。彼は協力を引き受けるものの、あくまで地元のやり方で事件を解決しようとする。

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画面で観るぶんには美しい自然だけど、本来は人が暮らす土地ではないのかもしれない。

犯人は掘削所の警備員たちだった。警備員の一人であるマットがナタリーと恋愛関係になり、ナタリーを詰所に連れ込んでいたことに嫉妬し、レイプして殺してしまう。ナタリーを守ろうとしたマットも殺される。ただそれだけと言えば、それだけの理由なのだ。警備員たちがナタリーを襲う様子は、バカな学生サークルを観ているようで、観るに堪えないところがある。

罪のありかについて、個人の悪というより地域の性質を挙げているように感じた。娯楽も何もない、閉ざされた地域。人口も少なく、産業も少ない。軍や大学という、ここから抜け出す道もあるにはあるがなかなかに厳しい。ワイオミング州は4年生大学は1つしかないという。教育に熱心な州とも思えないのだ。安易に「閉ざされた地域ゆえに起きた殺人」と言うことはできない。その地でまともに暮らす人もいるわけだし。ただ、もう少し移動しやすく温暖な気候ならば、また違った選択をとれるようにも思えるのだ。

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コリーは犯人の一人を捕まえると山の中に置き去りにする。犯人たちがナタリーを殺したのと同じように、犯人は裸足で山の中を走り、肺出血で息絶える。この制裁の加え方は、ジェーンがFBIの応援を呼ぼうとしたとき、状況的に他殺は明らかなのに応援を呼べなかった馬鹿げたルールと対になっているように感じるのだ。そこにはそこの掟があるという。納得のいく終わり方ではあった。

悪人と簡単に言っても、その悪は本人の資質は大きいが、それだけで構成されうるとは限らないのだろう。特に環境の影響は大きいはず。この映画では歴史の影響も感じる。白人たちが北アラパホー族と東ショーショーニー族をウインド・リバー保留地に押し込めたということもある。映画では直接的に描かれていないものの、ネイティブ・アメリカンへの差別もあるのだろうか。ナタリーの兄が語るこの地域から脱出することの難しさというのもあるのかもしれない。そして何もかもを封じ込めるような凍てつく寒さ。

サスペンス映画として純粋に面白いかといえば、そうでもなかったのですが、その地に生まれた宿命などを考えさせられる映画でした。いい映画だと思います。あとジェレミー・レナーがかっこよくてよい!


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