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旧作映画の感想、ネタバレしてます。
19
2020

魂のゆくえ

FIRST REFORMED / 2017年 / アメリカ、イギリス、オーストラリア / 監督:ポール・シュレイダー / ドラマ / 113分
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自分だけは汚れていないと信じていた。
【あらすじ】
信者からの相談を受けたが、いろいろ大変だった。



【感想】
『タクシードライバー』のポール・シュレイダー監督作品。イーサン・ホークが出ているとつい観たくなります。本当にいろんな役をやりますよねえ。幅が広い人の面白さがある。当たりハズレもなかなかですけど。今回はなんとも難しい映画。

『ハリー・ポッター』のように誰でもある程度、面白く観られる映画もあれば、こちらから行間を埋めなければならない映画もある。この映画は相当埋めなければならない感じ。埋めて埋めて埋めたところでよくわからないという。理解力が‥‥。

ニューヨーク州北部の古く小さな教会ファースト・リフォームド。トラー牧師(イーサン・ホーク)は敬虔な信徒メアリーから相談を受ける。メアリーの夫マイケルが環境問題に悩み、「こんな世の中に子供が生まれてくるのは不幸だ」と出産に反対しているという。トラーはマイケルの相談に乗ったが、彼はやがて鬱病からか自殺。トラーは、マイケルが残した資料を調べるうちに自分の所属する教会も環境破壊企業からの献金を受けていることを知る。

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トラー自身も、かなり重い葛藤を抱えているように見える。息子を従軍牧師として戦地に送り出し、戦死させてしまったこと。それがきっかけで妻とは離婚している。結果として戦争にも加担し、息子を失うことにもなった。彼は自分を罰したかったのではないか。

食事は少な目で、体調が悪いのに酒を飲み続け、トイレの詰まりをとる薬品を酒に入れている。キリスト教で自殺は禁じられている。積極的に自殺するわけではないが、いつ死んでもおかしくない行為をしている。未必の故意に見える。彼が病院で検査を受け、癌を宣告されてもまったく動揺しないのは死による救いを求めているからに思えた。

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トラーは、ファースト・リフォームドという古く伝統のある教会の牧師をしている。だが、日曜に礼拝に訪れる信者はごくわずか。所属するメガチャーチに助けてもらい、観光客のガイドをすることでなんとか活動が続けられるという有様。教会の水漏れは自分で直すし、壊れたオルガンもメガチャーチからの資金でようやく直してもらえた。

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トラーは自らを厳しく律し、これ以上ないほどの倹しい生活をおくっている。家には来客用の椅子が一脚あるほか、ほとんど物がない。不思議なくらいガランとしている。これは彼の心象風景の投影に見える。あまりにも寒々しい。息子を亡くし、妻とも別れた彼にはもう何も残っていない。ただ、一脚の椅子があるということは、心の底では誰かを求めているのだろうか。

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トラーは環境破壊について調べるうちに、環境破壊に反対する思想に共鳴していく。彼は質素な生活をおくっている。環境破壊はよりよい生活をしたい、もっと消費をしたいという贅沢な欲求と深く結びついている。トラーが環境破壊に反対するのは当然に思える。

ところが、ファースト・リフォームド上部のメガチャーチが、環境破壊企業からの献金を受けていることを知ってしまう。今までファースト・リフォームドを維持していた資金もメガチャーチから出ていたわけで、知らないうちに環境破壊企業の世話になっていたのだ。それどころか、今度行われるファースト・リフォームドの記念式典では、政治家や環境破壊企業の宣伝にも協力しなければならない。苦悩した彼は自爆ベストを着こみ、全員を巻き込んで爆死することを決意する。

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え、急に? ってなりますね。オイオイ。極端な人だよ。いきなりテロリストの誕生である。

彼はその場にいる全員を殺すことで罪を背負う。罪を負ってでも環境破壊や腐敗をくいとめる。人の罪はキリストが背負うものだとメガチャーチの人間は言った。トラーは、みずからがキリストになる決意をしたということなのかな。やってることは、ただの爆弾魔なのだけど。

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自爆を決意した彼だが、敬虔な信徒メアリーが教会を訪れる。メアリーを目にした瞬間、彼は自爆を断念するのだった。そしてみずからの体に有刺鉄線を巻き付け、血を流し、みずからを罰するのだった。うーむ、ほとんど病気おじさんである。

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トラーの部屋を訪れたメアリー。二人は熱く激しい口づけを交わすのだった。はあー?????? となり、「君らいったい!?」と観客をはるか後方に置き去りにしたまま映画は終わる。なんだこれは。

環境破壊を声高に批難する人々も、環境破壊企業の恩恵を受けて暮らしている。特に先進国に暮らす人は、いくら環境破壊に反対だと主張しても、自分だけの力ではそこから逃れることはできない。環境破壊を食い止めようと過激な手段をとるのが正しいことなのか、最後はやはり愛なのではないかということなのかな。メアリーが妊娠しており、出産をあきらめないのは、何があろうと次の世代は続いていくことを示しているように思える。彼女は夫のように絶望しない。

この映画を観た人は「結局、答えなんてないじゃないか」と思うかもしれない。そうなのだ。誰もが納得するわかりやすい答えなんてどこにもない。だからといって開き直るんじゃなく、有刺鉄線を体に巻き付けて(自戒して)せいぜい苦しんで生きていく。企業と結託して開き直り、メガチャーチの人間のように贅沢を謳歌するという人もいるだろうし、自暴自棄になってすべてを破壊しようとする人もいるかもしれない。それでも個人にできることは、自戒しつつ、苦しみつつ生きていくほかないのではないか。

え、なに、どゆこと? 三行で教えて? というのはある。そもそも解決などない。生きていくだけで罪を犯し続けるだろうが、それでも開き直ってはいけない。では、私は今から有刺鉄線を買いに行きます。


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