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2011

映画「悪人」

▼映画「悪人」 / 2010 日
出会い系サイトで出会った二人。土木作業員の祐一(妻夫木聡)と紳士服量販店に勤める光代(深津絵里)、出会って間もないものの二人は強く惹かれあった。しかし、祐一は今、世間を騒がしている保険外交員殺人の犯人は自分であると光代に告白する。

悪人というタイトルであるものの、はたしてこの映画に悪人はいたのだろうか。絶対的な善悪はなく、それはどの立場から観るかによる。殺された保険外交員の女性は、彼女の父親から見れば、わがままではあるがかわいい娘である。だが、主人公の祐一から見れば、金はせびるは、レイプ犯にしたてあげようとするは、とんでもない悪人である。無論、その祐一も彼女から見れば、彼女を殺した悪人に他ならない。

この殺人が起こった理由はいろいろな人間が少しずつの不幸、悪意を持ち寄った結果に見える。出てくる登場人物で本当にとんでもなく悪い「ザ・悪人」みたいな人間は一人もいない。みな、ちょっとずつ荒んでいる。その荒み方が本当にそこら辺にいそうな感じなのである。

学生時代、人材派遣会社に登録したことがある。その会社で出会った人たちは荒んでいる人が多かった。まだ若いのに「俺の人生もう終わってるよ」と言う人もいたし、世間に対する恨みを口にする人もいた。もちろん世間の派遣会社が全部そうだと言うつもりはないけど。祐一も、まだ若いのにもう世間や自分に失望している。光代も、会社と自宅を行ったり来たりするだけで、その行き帰りの国道の範囲だけで自分の人生が完結していると嘆いている。

そういう閉塞感の打破、誰か大切な人と繋がりたいという欲求から、出会い系サイトに登録したのかもしれない。誰かに信頼してもらえば、又誰かを信頼することができれば、自分の中で何かが変わる、昨日と今日がまるで変わらない単調な暮らしから抜け出せると思ったのかもしれない。満たされている人は欠落している人を笑うかもしれない。だが、そういった欠落は笑ってよいものではないのだろう。

劇中に、海に面して立っている灯台が出てくる。その灯台について祐一は、そこから先はどこにも行けない行き止まりであると言い、光代はどこにでも行けそうな気がすると言う。どこへも行けないし、どこへでも行ける。どちらも正しい。どちらだっていいのだ。祐一がもっと早く光代に出会えたなら、どこへでも行けたことに気づいただろう。

社会への不信感、どうしようもない孤独感、単調な繰り返しの日、特に景気の悪いときなどは、うつむきがちにもなるだろう。もっと周囲の人に優しくすることができれば、それだけでずいぶん変わるし楽になれるのに、そんな余裕はないし気づかない。苦境にいればいるほど、気づきにくい。だが、絶望しながら、何かを恨みながら、生きていくのはあまりにも惜しい。たしかに生きていくのにいろいろ問題は多いが、投げ捨てるほど悪い物でもないと思う。切羽詰ってもがこうがどうしようが80ぐらいになれば、だいたい終わってるんじゃないのか。


▼あれ、まったく映画の感想になってないですね。まあ、あんまりいろいろ思い詰めんなってことでしょうか。

▼それぞれの役者の演技が本当に素晴らしいです。もう、憂鬱になる!それは名演技の結果だからしかたないが。
主演の二人がいいのはもちろんだけど、特に、柄本明、樹木希林が良かった。

みんなちょっとずつ悪い。でも、なんにも悪くない人なんてどこにもいないんだよねー。
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3 Comments

しゅん  

No title

<みちよさん
悪人よかったですねー。ベテランの二人が本当に良かったです。小説のほうも、みちよさんの感想を読みましたが良さそうですね。読んでみようかなあ。

<冬眠中さん
いつもありがとうございます。こんなネットの片隅で細々とやっているブログを読んでいただいて、ありがたい話でございます。どうしてもとおっしゃるようなら寄付も受け付けております。ええもう、ええもう、それはお気持ちだけでけっこうです!一口三万円です。

手塚治虫ミュージアムってあるんですね。行ってみたいです。そういえば藤子不二雄ミュージアムは予約制みたいですね。しばらくはチケット取れなそうですねー。

2011/08/25 (Thu) 23:32 | EDIT | REPLY |   

冬眠中  

No title

いや、1番楽しみにしてるのは何を隠そうこの僕です。この思いは誰にも負けません!


うわぁ、川崎のミュージアム絶対行きます!
因みに僕は宝塚まで手塚治虫ミュージアム目当てで行きまた。

2011/08/25 (Thu) 01:33 | EDIT | REPLY |   

みちよ  

No title

あー、悪人。これいいよね。
原作が素晴らしかったので映画は不安だったのだけれど、
よくできていたと思います。
わたしも柄本さんと樹木希林さんがすごく良かったと思う。
樹木希林さんに至っては、背中でいろんなことを語ってるように思いました。

もしかするとわたし、しゅんさんの日記を一番楽しみにしてるかもしれない!

Best of Blogの称号をあなたに。
わたしは遊び過ぎていていつまでたっても更新できてなーい。

2011/08/24 (Wed) 23:55 | EDIT | REPLY |   

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