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2014

映画「プッシャー2」

プッシャー2
Pusher Ⅱ / 2004年 / デンマーク / 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン / 犯罪

せめておまえだけでも、まともな場所で。
【あらすじ】
麻薬密売人のトニー(マッツ・ミケルセン)。刑務所に入っている間に子供ができてました。本当に俺の子かなあ‥‥?


【感想】
プッシャーとは「麻薬密売人」のことです。前作「プッシャー」は、麻薬密売人フランクが主人公だった。フランクはちょっと目端が利くタイプ。だが、その小利口さゆえに、麻薬で一儲けしてやろうとして失敗する。中途半端な頭の良さが命取りとなった。

そのフランクの相棒がトニーで、この映画の主人公。フランクと違って、かなりアホである。

後頭部にでかでかと「RESPECT」とタトゥーを入れている。そんな人を誰が尊敬できようか。血統書付きのアホでしかない。

はしゃいでるアホの人。いい笑顔だなあ。

出所して街を歩いていたら、目の前にフェラーリがあったので盗みます。ア、アホの人だ。「親父にプレゼントを持ってきたぜ!」とご機嫌なトニーさんだったが、父親からはえらい怒られるのだった。しかし、父親が怒ったのは車を盗んだからではなく「注文があってから盗め、バカ!」ということなのだ。とんでもない親子だよ。

父親(右)は、自動車工場経営、かつ犯罪者。

トニーは刑務所にも入っていたし、出所後すぐに車を盗むし、頭に変なタトゥー入れてるし、ドラッグはやるし、まるでいいところはないものの、なぜか悪人に見えない。とにかく環境がひどい。周囲にまともな人間が一人もいない。

人の家を訪問したとき、お茶かコーヒーを勧められることがある。それが「コカインにする?それともヘロイン?」みたいな環境なのだ。挨拶代わりにドラッグという。みんな、とりあえず吸ってるねえ。トニーさんも当たり前のごとく吸っている。朝はシリアルに混ぜて食べている。大丈夫か、そんなことして。

もはや善悪の境すら曖昧に感じる。わたしが「悪人」とか「アホ」とか言っているのは、恵まれた環境にいるからであって、この映画に出てくる貧困層に生まれていたら、わたしも悪人になりアホになる。環境の違いでしかない。そういった事情はあるものの、トニーさんはアホである。気の小さいところもあって指示された殺人もうまくできない。父親の愛情に飢えている弱い人間なのだ。

全員がドラッグをやっているようなパーティー会場から、衝動的に自分の子を連れ出してバスに乗り込む。コイツだけは、ちょっとはマシな所で育ててやりたい。そんなトニーの気持ちが伝わってくる。でも、トニーさん、何も考えずに手ぶらで出てきてしまった‥‥。きっと新しい街でも、いろんな失敗をするのだろう。

貧困、銃、麻薬、売春などの問題は社会にうったえる作品にすることもできる。それはそれで立派だけど、プッシャーは問題が個人の視点から抜け出さない。どうしようもない生活を送る人間の弱さを、否定も肯定もせず、嘲笑するでもなく、ただじっと見つめているように見える。主張みたいなものがあまり感じられない。「こんな世の中だけど、生きていかねば」というのではなく「こんな人もいたね」という、居酒屋で偶然隣に座ったおじさんから聞いた思い出話のような。不思議な余韻を残す作品。お薦めはしないけど、好きです。


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