14
2014

映画「ブロードウェイと銃弾」

ブロードウェイと銃弾
Bullets Over Broadway / 1994年 / アメリカ / ウディ・アレン / コメディ
名称未設定-1 
「俺の舞台を汚すんじゃねえ!」
【あらすじ】
売れない劇作家デビッド(ジョン・キューザック、左)は、やっと自分の戯曲をブロードウェイの舞台にかけることに成功した。しかし、出資者からは自分の愛人を主役にしろと命令され、共演者はセリフを増やせとかいろいろうるさい。みんなわがままだよ!


【感想】
ウディ・アレンの作品は、どうもよくわからないものが多くて、わたしの人生経験の乏しさが影響してるのかしらなどと思っていたが、これはわかりやすくて良かったですね。デビッドの困りっぷりにニヤニヤしてしまう。

デビッドは、出資者でマフィアの親分であるニックから、愛人オリーブ(ジェニファー・ティリー、左から二人目)を使うように強要される。だが、この人がまったく演技が駄目なのだ。声はキンキン甲高いし、セリフもふつうに読めない。そのくせ「わたしのセリフを増やして!」などと要求するのだった。とんでもないお人。セリフぐらい憶えろよと、ボディガードにも呆れられる。

オリーブが問題児なのはさておき、出演者たちから女性の描き方や心理描写について脚本の不備を指摘される。最初はオリーブのボディガードとして付いてきたマフィアのチーチ(チャズ・パルミンテリ、右から二人目)も、いろいろと脚本に口出しをするようになる。それをうるさく感じていたデビッドだが、チーチの言うとおりに直してみたら、グッと作品が良くなってしまう。

終いにはデビッドとチーチの二人で仲良く脚本について話し合うことになる。微笑ましい。チーチは、オリーブの演技のひどさに苛立ち「あいつの演技は舞台を台無しにしている!俺の舞台を汚すんじゃねえ!」と、怒りまくるのだった。おお、あんた、ボディガードなのに、それを言うか。デビッドは当初、オリーブを使うことが嫌で嫌でたまらなかったが、舞台の評判も上々なので、妥協してオリーブを使い続けてもいいんじゃないかと思っている。

ところが、チーチのほうが許せないんですね。結果、オリーブの大根ぶりに頭に来てオリーブを殺すという。おおお、狂気の芸術家である。

芸術のためには人を殺すことも辞さないというのが、やはり真の芸術家なのだろう。それが世間的に許容されるかは別の問題だけど。映画の中で、デビッドは「アパートが火事になって、一般人とシェイクスピアの未発表の作品、どちらか一つしか助けられない場合は、シェイクスピアの作品を持ち出すべきだ」と言っている。だが、デビッドは結局は、一般人を助けてしまう人間なのだ。一方、チーチはシェイクスピアの作品を持ち出すのだろう。「俺の舞台を汚すんじゃねえ!」の人だから。このセリフ、どこかで使いたいなあ。どこで。

最後にデビッドはみずからが真の芸術家ではないことを認めて、ブロードウェイを妻と去ることになる。でも、それは敗北ということではないんですよね。妻との愛情も確認できたし、芸術家ではない普通の人生というのも、やはり価値があるものだから。この映画の雰囲気は、落語に近いものを感じた。落語は市井に生きる人々が主役ですが、人間の駄目な部分、どうしようもない部分を許容してやる温かさみたいなものがある。愉快な人情噺を聞いたような、そんな心持ちになりました。

あと、やはりチーチが抜群に良かったですね。芸術に一切の妥協は許ないという強固な意志。マフィアなんだけど。

スポンサーサイト

0 Comments

Leave a comment