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2014

パーマネント野ばら

2010年 / 日本 / 監督:吉田大八 / ドラマ、コメディ
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棘はあるが、たくましくも美しい花々。
【あらすじ】
ひなびた田舎の漁村。なおこは離婚してシングルマザーとなり、一人娘のももを連れて実家に戻っていた。実家では母が、村唯一の美容院「パーマネント野ばら」を切り盛りしている。やかましいパンチパーマのおばちゃんがいっぱい出ます。


【感想】
原作となった西原理恵子の漫画「パーマネント野ばら」は未読です。

田舎の漁村の雰囲気が本当にいいですね。のんびりしていて、山があって、海は広いし、人々はうるさい。なおこ(菅野美穂)の母(夏樹マリ)が切り盛りする美容院に集うおばちゃんたちが濃い。

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昼間から飲むパンチパーマ軍団のみなさん。会話の90%は下ネタである。中学生男子のほうが、まともではないか。なおこの幼馴染のみっちゃん(小池栄子、中央)以外パンチパーマという。パンチ率高し。なんで流行ってんのか。おばちゃんがパンチをあてる理由が本当によくわからないんだなあ。

小池栄子さんはあまり役者としてのイメージがないのですが、とてもいいですよね。「八日目の蝉」でも見事に演じてました。男に振り回される幸薄い感じがすごくいい。フィリピンパブのママをやっている。

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もう一人、なおこの幼馴染ともちゃん(池脇千鶴)。付き合った男すべてから暴力を振るわれる男運の無さ。やっと暴力を振わない男を見つけたら、ギャンブル狂いでいろいろあって死亡という。呪われてるのではないか。

ともちゃんとなおこが、死んだともちゃんの旦那の形見を埋めに行く場面が印象的だった。そこでともちゃんが「人間は二度死ぬ。一度目は呼吸が止まること。二度目は人から忘れられること」みたいなことを言う。これがねえ、ちょっといい話をしただけかと思いきや、大いなる伏線だったという。後になって驚きました。

この映画に出てくるすべての女性が男に振り回されている。そんなに振り回されるのだったら、男なんか見限ればいいのにと思うがそうはならない。ここらへん、わたしが女をまったくわかってないのだと思う。舞台が貧しい漁村ということもあって、経済的に自立が難しいとも思うのだけど、それだけではない。どんなに失敗しても、新しい男を探していく姿は野ばらのたくましさを感じさせる。とにかく、めげないんですよ。性(さが)を超えて業といってもよいぐらいで、執念すら感じる。

いくつになっても女は女ということなのか。わかってないのにあんまり変なこと書くと怒られそうで怖い。パンチの人に怒られそうで怖い。permanent(パーマネント)という単語には「永久の」「変わらない」という意味もある。劇中の美容院の名前にもなっているが「パーマネント野ばら」というタイトルは、変わらない女たちの性を表したものなのではないか。野ばらには、夜に香りが強くなる性質があるそうで、そういうところも面白いですね。

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この映画、ふつうの人があまり出ないんですが、数少ないふつうの人として高校教師カシマ(江口洋介)がいる。なおこの恋人である。よくあるカップルなのだ。なおこがふざけてカシマの背中におぶさって、カシマと「重い」「重くなーい!」と言い合ったり。なんだこのベタすぎるイチャつきぶり。アホか。うらやましいわ。

田舎の日常をほのぼのと描いた映画かと思いきや、急に物語が反転する。信じていたものが足元から揺らぐような。田舎の短所を描くときに、村人の干渉の強さ、閉鎖性が取り上げられることが多い。長所は、人の繋がりの強さである。でも、長所と短所は同じことが多い。

今まで村人たちがなおこに取っていた「新しい男はできたか?」という、土足で踏み込んでくる態度。それが反転して優しさに変わるところに、ぐっとくる。なおこは一度村を出ているから、村の中ではちょっと洗練されている感じがある。村人を見下しているわけではないのだけど距離を置いていて、村の人たちを上から優しく見守っているような。その関係が逆転する瞬間があるんですね。小池栄子を始めとする村人たちの優しさが伝わってきた。正しさを押し付けるのではなく、なおこそのものを受け入れてくれる。

描きようによっては、ミステリーやホラーとしてもいけるような作りですね。意外な展開に驚きました。駄目でどうしようもない人々を描いたすてきな映画でした。監督は「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督。


※ここからネタバレしてます。
伏線の張り方が見事で、どこか違和感を残しつつも、いつのまにか流されていってしまう。カシマが無言で旅館から消えたとき、カシマには実は妻子がいて、何か用事を思い出して慌てて帰ったのかと思いました。でも、栓が開いてないビールを見たときにゾッとした。ですが、そこではっきりとわかるんじゃなくてモヤモヤしたままだったけど。

池脇千鶴の「人間は二度死ぬ」同様、見事な伏線だと思います。あと、なおこの子供はカシマの子ではないのかなあ。年齢的に計算が合わない気がするし。permanent(永久、変わらない)は、なおこの中のカシマにも掛かっているのかもしれません。

海岸で、なおこを優しく受け入れる小池栄子の表情がとても良かったです。
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2 Comments

R  

No title

さっそく感想を書いていただいてありがとうございます。もうご覧になっていたとは。
いやー、観る前にネタバレしていなくてよかった~。。
先に検索したりするとうっかりネタバレを見てしまうこととかあるので・・・
なおこは、デートに行く時にきちんとお洒落して行っているんですよね。普段よりもかわいくなっている所がいいなあと思いました。媚を売っている感じではなく、礼儀としてのお洒落みたいな。「パーマネント野ばら」という名前にはそんな深い意味があったのですね。しゅんさんにおすすめして感想を書いていただいてよかったなぁ。。

2014/10/17 (Fri) 15:30 | EDIT | REPLY |   

しゅん  

No title

薦めていただいてありがとうございました。

登場人物に温かみがあったり、変だったりで、良かったですねえ。
ミステリーみたいになっているのも驚きでした。

>「パーマネント野ばら」という名前にはそんな深い意味があったのですね。

いや、これは、なんとなくそう思っただけですので。
まったくの勘違いということもありますので。どうかどうか。

「凶悪」すでに借りられていたとはー。
うーん、手遅れでしたか。

2014/10/18 (Sat) 23:45 | EDIT | REPLY |   

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