22
2014

映画「光のほうへ」

光のほうへ
Submarino / 2010年 / デンマーク / 監督:トマス・ヴィンターベア / ドラマ
名称未設定-1
負の連鎖を断ち切ることはできるのか。

【あらすじ】
ニックと弟(名前なし)の兄弟は、育児放棄をした母親に代わり、末の弟を育てていた。しかし、幼い二人に子育てができるはずもなく、末の弟は死んでしまう。成長した兄弟は疎遠になっており、母の死をきっかけに再び交流が始まる。


【感想】
トマス・ヴィンターベアという監督は、つらい作品を作りますね。冤罪の物語「偽りなき者」もそうでしたが。
名称未設定-2
末の弟の死に責任を感じ続けているニック(ヤコブ・セーダーグレン、右)。大人になった今も自分を許せずにいる。赤ん坊と母親は死に、彼に対して「おまえは悪くない」と言ってくれる人がいないんですよね。弟とは疎遠だし。自分に対して厳しい人であるほど、このトラウマからは抜け出せないのでしょう。

母の死を知ったニックは、久しぶりに弟に連絡を取る。電話の向こうから子供の声が聞こえてきたので、ニックは驚いて電話を切ってしまう。その後に、電話機を殴りつける場面が印象的だった。

自分があの日の出来事についていまだに苦しんでいるのに、弟は子供を作って育てている。おまえ、なんなんだよ、あのときのことを忘れたのかという怒りなのだろう。それにしても、電話機殴りすぎである。
名称未設定-4
弟(ペーター・プラウボー)には名前がないんですよね。なぜだろう。ニックと弟が育てていた赤ん坊は、すでに母親が育児放棄をしていたため、名前がない。そこで二人が名前を付けるエピソードがある。ひょっとして弟も、母から名前がもらえなかったことを暗に示しているのだろうか。そのために弟は名無しなのかなあ。

で、弟は極貧状態で息子のマーティンを男手一人で育てている。奥さんは交通事故で死んでいると息子には説明していたが、麻薬もやっていたらしいので本当のところはわからない。デンマークというと社会福祉が充実してるイメージがありますが、もう本当にどん底なのだった。保育園に通う息子に弁当も持たせられない。息子には「友達から弁当を分けてもらえ」などと言う始末。
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弟は息子のマーティンを愛しているし、マーティンも弟を愛している。この場面は光の入り方がすごくきれいだ。だが、貧しくとも幸せな二人というわけにはいかない。弟は薬物依存なのだ。北欧映画で薬物が出てくるものは多い。それだけ深刻なのだろうけど。ある日、弟は大金を手に入れて生活を立て直す機会を得る。だがそれでも正しい方法を選ぶことができない。観ている側は、ああなんでそんな方へと、ひたすらやきもきする。

麻薬に逃げるとか、犯罪にはしるとか、それは彼の資質とも言えるし、彼の資質のせいだけとも言えない。純粋にどこまでが彼の責任と切り分けることはできない。貧困、育児放棄、暴力、薬物・アルコール依存、そういった負の連鎖を断ち切って、光のほうへ進むことは容易なことではない。とても苦しい映画。

あー、もー、たまらなく重苦しい気分になりたーい!というときにお薦め。そんなときあるのか。

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