24
2014

映画「あなたへ」

あなたへ
2012年 / 日本 / 監督:降旗康男 / ドラマ
名称未設定-1
健さんがいるだけで。
【あらすじ】
亡くなった妻から絵手紙が届いたので、約束を果たすために妻の故郷まで旅をします。面倒だなー。生きているうちに言ってくれてもいいのにー。


【感想】
高倉健の映画をほとんど観てないのですが、どうも全員同じ役に見えてしまうんですよね。無口で朴訥で頑固、言葉で多く語るタイプではないけれど優しさを持っている。あと、ケンカしたら滅茶苦茶に強い。どんな映画でどんな役をやろうと高倉健なんですよね。キムタクとか渥美清とかにも通ずるものがある。ファンは、健さんが動いているというそれだけで嬉しいんじゃないでしょうか。

役の幅が広くて、どんな役でも演じられる役者というのもすごい。だが、健さんのように、ほぼ同じ性格の役をやり続け、高倉健という人格と役が同化している錯覚を受けてしまうのもまたすごい。観客は「この人が出ているだけで満足」となるのだから、それこそ本当のスターなのではないか。
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で、健さん演じる刑務所の指導教官倉島。病気で亡くなった妻の洋子(田中裕子)から「故郷の海に散骨して欲しい」という願いを書いた絵手紙を受け取る。奥さんの真意をはかりかねたものの、とりあえず遺言どおりに長崎県平戸まで車で旅をします。

なんだか、ちょっと難しい話なんですよ。健さん、例によってあんまり話さないし。
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洋子は、歌手で刑務所にたびたび慰問に訪れる。そこで健さんと知り合うことになる。だが洋子には当時、付き合っていた相手がいる。その男は刑務所に収監されている。男は洋子に会おうとはしない。自分のことは忘れて先へ進めと思っている。だが、男のことを思い続けている洋子は、慰問して歌うことで男に想いを伝えようとする。

男は洋子が送った絵手紙を大切にしている。洋子の絵手紙には雀が描かれている。男は、収監されている房の窓際で雀を餌付けしている。これは、洋子と男は会っていなくてもお互いを思っている、通じ合っているということだろう。男はやがて病死する。

倉島はこういった事情を知りつつも、あえて触れずに洋子と一緒になったように思うのだ。洋子はなぜ故郷に散骨してほしいと遺言を残したのだろう。倉島には申し訳ないと思いつつも、刑務所で病死した男を愛し続けていたのかもしれない。だから、倉島と同じ墓に入る資格はないと考えたようにも思う。

だがそれだけでないようにも思うのだ。二人は遠慮しあっていて、夫婦でありながらもお互いのことをわかろうとしなかった。それは倉島の持つ優しさのせいもあるが、壁を作っていたことには違いない。洋子は遺言で、倉島に故郷まで旅をさせる。旅で知り合った人々はみなどこかに傷を抱えていた。
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妻を失った国語教師(実は車上荒らし)のビートたけし、妻に浮気されている弁当の実演販売の男(草彅剛)、家族を捨てた男(佐藤浩市)。彼らを助けたり、また助けられたりして、長崎まで旅をする。倉島は、人を助けることはあっても助けられることを許さないところがあった。上司(長塚京三)に退職届を簡単に出してしまうこともそうである。上司は倉島の辞職を許さず、休暇扱いにする。

倉島は人に迷惑をかけない。だが、それは人との関わりを拒絶しているようにも映る。洋子は、倉島と深く関わりたかったのではないか。迷惑をかけたり、かけられたり、お互いの過ちを許しあったり、それを旅を通して倉島に学んでほしかったのではないだろうか。

健さんが亡くなったとき、健さんと手紙のやりとりをしていたというニュースを何件か見た。忙しい人だろうに、それでもいろんな人を気遣っている。人と関わりあっていくこと、それはときに面倒ではありますが、やはりそこにしか幸せはないのだ。それが健さんの伝えたかったことにも思える。

この映画が誰にとってもいい映画かというと少し迷う。なにせ、健さん、説明しない男である。説明したら負けの人である。自分が苦しい時、つらい時、高倉健を観てきた人、同時代を生きてきた人にとっての映画かもしれない。

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