04
2015

別離

2011年 / イラン / 監督:アスガル・ファルハーディー / ドラマ 
名称未設定-1
戒律のある生活。
【あらすじ】
イランのテヘランに暮らす中流家庭の夫婦。彼らは、アルツハイマーの父の面倒をみてもらうため、家政婦を雇うことにする。壮絶に揉めます。思っている3倍ぐらい揉めた。


【感想】
第84回アカデミー賞外国語映画賞を受賞。アカデミー賞の中で、外国語映画賞だけは文学的なものが受賞する傾向が強いように思える。どこかカンヌっぽいというか。アカデミー賞の良心のような位置にあるのではないか。というわけですから、映画に派手さはない。撃ち合いもなく、怪物とかも出ず、宇宙にも行かない。2時間ひたすら揉めるのだった。 

イランの社会問題について描かれている。もっとも、高齢化や格差社会というのは世界中での普遍的問題なのだろう。イランも日本もかわらないように見える。ただ、一点大きく違うのが宗教による戒律である。

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主人公夫婦は、アルツハイマーの父の面倒をみてもらうため家政婦としてラジエー(メリッラ・ザレイ、右)を雇う。彼女は敬虔なイスラム教徒で、外出するときは真っ黒な衣装(チャドル)に身を包んでいる。一枚目の画像、中流家庭の妻シミン(レイラ・ハタミ、左)は、ヘジャブというヘッドスカーフをしている。同じイスラム教徒ながら、信仰心の違いが現れているようで面白い。

イスラム教徒は厳格な戒律を守って暮らしているが、現代社会では戒律を守ることが難しくなっているように感じた。女性の社会進出も進んでいる。イラン女性の大学進学率は1998年に、男性の大学進学率を上回った(公式サイト)とある。社会の形が変わってきており、女は家庭、男は会社ということでもなくなっている。

中流家庭の妻シミンも外で働いており、アルツハイマーの父親の面倒を看るのが難しい。そこで家政婦としてラジエーを雇うことになるが、イスラム教の女性は家族以外の男性に触れることが社会的にも精神的にも難しい。目の前で、介護している男性が漏らしてしまっても、戒律上、触れることができない。ラジエーは聖職者に電話して、自分が男性に触れても大丈夫か確認するが、駄目だと言われてしまうんですね。

で、厳格な戒律を守っていると善良な人間になるかと言えば、この作品を見る限りそうではない。

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家政婦ラジエーの夫ホジャット(シャハブ・ホセイニ)は、失業中でやけを起こして暴れてばかりいる。挨拶代わりにとりあえず暴力という、困った人なのだけど。戒律に触れていなければ人を罵ろうが暴力を振るおうがOKに見える。そんなバカな。

家政婦ラジエーにしても、事件の鍵を握る大きな嘘をついている。ラジエーは「コーランに誓え」と言われて、誓うことができない。もし誓ってしまうと、娘に罰が当たるのではないかと恐れている。彼女は、嘘をついた相手に迷惑がかかるからではなく、娘に罰が当たるから誓えないんですよね。厳格な戒律を課したとしても、人間性は向上しないのかもしれない。いかにして戒律を逃れるかにいってしまっている。

ただ、これは戒律だけではなく法律でも同様のことが言えるのではないか。そもそも社会生活をうまく送るため、弱者の権利を保護するために法があると考えれば、法律違反してなければ何をやってもいいというのは本末転倒である。だが、法は社会状況に応じて変わるのが当たり前だが、戒律となってくると難しい。

戒律は法律のように「状況に合ってないんだから変えれば?」といかないのではないか。どうやって現状と乖離した戒律の是正をはかっていくのだろう。そんでまあ、出てくる人全員少しずつ悪いんですよねえ。仕方のないところもありますが。一つの事件を通して、これほどイスラム社会がよく見える作品はないのではないでしょうか。ミステリーと社会問題を絡めてあるのも面白いですね。善悪がはっきるする話ではなくモヤモヤ感がものすごいので、体力があるときに。

 
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