01
2015

映画「キッチン・ストーリー」

キッチン・ストーリー
Salmer fra kjøkkenet / 2003年 / ノルウェー、スウェーデン / 監督:ベント・ハーメル / コメディ

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老人による老人観察日記。
【あらすじ】
1950年代初頭、ノルウェーの田舎町。独身男性の台所での行動を調査するために、スウェーデンから台所行動学の調査団がやってきました。もっと他に調査することはないのか。


【感想】
笑いにもいろんな種類がありますが、この映画は登場人物に茶目っ気があって笑わされてしまう。かわいらしいんですよね。こういう笑いは男よりも女のほうが好きかもしれません。

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独身男性の台所の導線調査に来た調査員フォルケ(トーマス・ノーシュトローム)。台所での主婦の導線調査は本当に行われたことがあると、監督がインタビューで語っていた。しかし、部屋の隅から見下ろされたら落ち着かないことこの上ない。

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調査団のかたつむりのような車。ここで寝泊まりする。この車と手前の乳母車、色や形を合わせてますよねえ。独特の丸っこさがいいんだなあ。

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車も人も地味で丸っこい。

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調査を受け入れた独身男性イザック(ヨアヒム・カルメイヤー)。一見、頑固そうだけど優しいおじいちゃん。おじいちゃん率9割越えの映画である。

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イザックの誕生日を祝う二人。きっちりスーツを着ていたり、ケーキにやたらとロウソクを立てたり、大笑いするほどではないのですが、ちょっとしたおかしみがある。イザックが、フォルケがいないときに調査員の椅子に座るところもすごくいい。座ってみたかったんだなー。お茶目すぎる。

独身で年配の男二人というのはどんな話をするのかな。何に興味があるのだろう。子供や妻もいないわけだし、あまり話すこともなさそうだけど仲良さそうなんですよねえ。

テレビもPCも携帯電話もない生活も興味深い。現代は、空白を手軽に塗りつぶす道具に溢れていますが、この時代の人はどうしていたのだろう。空白と向き合うことで、人生の大切な何かを得ていたような気がする。

一箇所、とても気になる場面があった。調査員のフォルケとイザックが仲良くなったことに嫉妬し、イザックの友人がフォルケを殺そうとする。イザックはフォルケが気づかないうちに命を救うが、そのことを誰にも言わない。また、フォルケの命を奪おうとした友人を責めもしない。人を殺そうとした人間と、その後もふつうに付き合っている。

考えてみれば、ものすごく変なことなのだけど、それもすんなり受け入れられてしまう。まあ、この人ならそんな感じかもしれないと。これをあまり変なことだと観客に思わせないのって、すごいことなんじゃないか。「キッチン・ストーリー」という虚構の世界をきっちりと成立させているからこそ、自然に観られる。

スウェーデンとノルウェーという関係も興味深い。二人の会話の端々から、ちょっとした皮肉や冗談が交わされる。二国間の関係を知っていれば、より楽しめそうです。当時はいろいろあったけど、戦争を乗り越えて今は良好な関係に近づいたのかもしれない。日本は最近、あまり隣国とうまくいってないけれど、こうやって皮肉や冗談が言い合える関係が築けるといいですね。

人を傷つけない笑い、穏やかな生活、荻上直子監督の映画が好きな人はかなり気に入ると思います。とても穏便な感想になってしまった。人が死にまくる映画ばかり観ておりましたが、この映画を観た後は菩薩の心境である。人が死にまくらない映画はいいなあ!

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