04
2015

映画「暴走特急 シベリアン・エクスプレス」

暴走特急 シベリアン・エクスプレス
Transsiberian / 2008年 / スペイン、ドイツ、イギリス、リトアニア / 監督:ブラッド・アンダーソン / サスペンス

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「悪魔を殺すと天使も死ぬ」
【あらすじ】
シベリア横断鉄道で旅をする地味な夫婦。一緒の部屋になったカップルと旅をするうちに、いつの間にか犯罪に巻き込まれていく。


【感想】
左が海外版で、右が日本版のジャケット。同じ映画とは思えない。もうあれか、日本版は「ド派手にしないと家族を殺す」と脅迫されて作ったのではないか。間違いない。「暴走特急」というタイトルだと違うイメージが湧く。マフィアに列車を乗っ取られて、セガール的な人が人質を救出しながら悪人をぶっ倒す。それが暴走特急じゃんかあ! 観てないけどたぶんそういうことではないか。

この映画はそういった映画ではありません。セガール的な人も出ない。

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シベリア横断鉄道で旅をするロイ(ウディ・ハレルソン、画面中央)とジェシー(エミリー・モーティマー、左)の夫婦。BSをつけていると、ヨーロッパ鉄道の旅という番組をよくやっている。優雅な高級列車の旅ですが、この映画に出てくるシベリア横断鉄道は違う。料理も美味しそうではないし、部屋も狭い。なにより出てくる人が全体的に怪しい。

車掌は言葉が通じないし、話しかけても怒鳴られる。列車の中では、麻薬犬を連れた警察官が麻薬捜査を行っている。冒頭に出てくる「中国とロシアの警察を信用するな」と語る乗客のエピソードもいいですね。ビザに記載された自分の名前のスペルが違っており、ロシアの警察に捕まる。ロシア警察は、見逃す代わりに賄賂を要求するが男は断る。男は(拷問で?)指二本を失ったという話。その話をした後、席を立った男は足をひきずりながら去っていく。お、おまえのことだったんか‥‥。こわーい。優雅な鉄道旅行ではないのです。飛行機つかお。

映画は、始まって30分が経っても事件らしい事件が起こらず、ちょっとじれるんですけど、その分登場人物の背景が細かく描写される。ロイは真面目で善良な夫、悪く言えば退屈な人間。妻のジェシーは若い頃に荒んだ生活を送っており、ロイと出会って変わることができた。ロイを尊敬しているものの、でもその善良さに少し退屈を覚えている。このままこの人と一緒に落ち着いてしまって本当にいいのだろうかと考えている。

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そんなときに同室になったカップルの男カルロス(エドゥアルド・ノリエガ、右)に惹かれる。若き日のベニチオ・デル・トロに似ている。危険な魅力を漂わせております。カルロスと一緒に旅をするアビー(ケイト・マーラ、左)。小柳ゆきに雰囲気が似ている。ほど良いヤンキーっぽさがはまっている。最近見ませんね、小柳ゆき。小柳ゆきの話はどうでもいいか。

ジェシーは若い頃は「同じ場所に一週間いたことがなかった」と語るように、男のところを渡り歩いていた。カルロスはきっとその頃知り合った男たちに似ているのだろう。危険を察知して警戒しつつも、それでもカルロスに惹かれていく。また、カルロスと一緒にいるアビーについては、若い頃の自分を重ねている。

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とても印象的なセリフがあって、ロイがジェシーに煙草をやめてほしがる場面。そのときにジェシーは「悪魔を殺すと天使も死ぬ」というテネシー・ウィリアムズの言葉を引用して拒否する。この言葉の意味を考えていた。煙草というのは確かに悪癖だけど、その悪癖も自分を構成している一部分で、そういう経験をしてきたからこそ今の自分が存在し得るということではないか。短所なくして長所はなく、長所なくして短所はない。

ジェシーは一度はカルロスに惹かれてキスをする。だけどギリギリのところで踏み止まる。たしかにロイは退屈で面白くない。容姿もパッとしないし、鉄道オタクで、危険なところはない。だけど、優しくて安定はしている。カルロスは魅力的ではあるが、そのカルロスの魅力は犯罪もためらわない無鉄砲さからきているものなのだ。短所と長所を切り離すことはできない。ジェシーはカルロスを拒絶する。

この映画はサスペンスでありながら、実はジェシーの選択の物語なのだと思う。

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麻薬捜査官役のベン・キングスレー。ロシアの警察は恐ろしいということを見せつけてくれます。拷問やりすぎである。あと、人を拘束したときに靴と靴下を脱がして逃亡を防ぐのが雪国ならではですね。おばあちゃんの知恵袋である。おばあちゃん、ロシアンマフィアなのかな。

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いろいろありまして、のびてしまうロイ。安全な鉄道オタクなのでしかたがない。

日本版のジャケットとは違う内容ですが、しっかりと作られたサスペンスでした。エミリー・モーティマーが主演というのも珍しいですね。話が動き出すまでが長いので、人によってはちょっと退屈に感じるかもしれません。なにせ暴走しないよ。鈍行でゆっくり行くよ。


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