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2015

映画「櫻の園」

櫻の園
1990年 / 日本 / 監督:中原俊 / 青春

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今いる場所の本当の価値は、今いる場所を離れてからわかる。
【あらすじ】
女子高生の世間話。


【感想】
アントン・チェーホフ作「桜の園」上演までの女子高演劇部の一日を描いた作品。本当にそれだけの作品で、凄惨な事件や激しい恋愛などはない。基本的に女子高生がだべってます。

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演劇当日、突然パーマをして現れた志水さん(中島ひろ子)。パーマで怒られるところが時代を感じる。今は懐かしい森永のPiknikが強調される。スポンサーだろうか。高校時代、これよく飲んだなあ。当時60円だと思ったけど量が少ない。

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あなたの近くにも一人はいたであろう怖い先輩。「あ? おまえ何言ってんの?」みたいな顔してますね。早く卒業してほしい。

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怖い先輩の「そっちから入ってきていいと思ってんの?」の言葉に凍りつく一年。こういう先輩いたわー。ほんと苦手だわー。

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劇中劇「桜の園」で女主人ラネフスカヤ役の倉沢(白島靖代)。凛とした雰囲気ながら、実は気弱。志水から仄かな恋愛感情を持たれている。恋愛といってもドロドロしたものはなくて、ささやかな憧れ。爽やかささえある。

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反抗期がよく似合う杉山(つみきみほ)。志水と倉沢を優しく見守っているのが良かったですね。

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本当に女子高生がだべっているだけの話で、じゃあそれがつまらないかというとそんなことはない。これは「けいおん!」を観たときにも思ったのですが、青春時代の懐かしさ、モラトリアムへの憧憬かもしれない。現役高校生がこの映画を観ても特に何も思わなくて、この時代を通り過ぎてきた人間が観ると、懐かしさも手伝った感慨があるという。

くだらない話で盛り上がったり、わけのわからないテンションの高さがあったり。周囲からの評価も関係なく、損得のない人間関係、それはせいぜい大学時代までかもしれない。桜の花のように短い期間。

チェーホフの「桜の園」は記憶の片隅に残っている。桜の園の所有者ラネフスカヤはかつては金持ちだったが今は困窮している。しかし、昔が忘れられず贅沢を繰り返す。桜の園は競売にかけられ、かつて桜の園で働いていた商人ロパーヒンに買われることになる。ラネフスカヤは泣き崩れるが、娘アーニャに促され、桜の園から出ていく。

何も考えず、毎日友達とバカ話をしていた高校時代はまさしく桜の園にいたようなものだったのかもしれない。そこがいかにすばらしい場所かなど、考えたことがなかった。この映画で扱われる桜の園は輝ける学生時代の暗喩なのだろうか。落ち込んだラネフスカヤ夫人を、娘アーニャは「もっと美しい桜の園を作りましょう」と励ますのだ。

わたしは、社会に出てから自分の桜の園を作ることができたのだろうか。

おや、考えても幸せにならない話になってきたような。窓から飛び降りたくなってまいりました。考えるのやめよ。

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90年代特有の服装、言葉や仕草も懐かしい。好かれている先生や嫌われている先生がいたり、学校あるある映画という側面も。セリフが棒読みに感じるところもあった。だが、そんなことはどうでもいいと思わせる魅力がある。高校時代によくある、全体が見えなくてすぐ思いつめてしまうところや、猫の目のようにくるくる変わる気分、反抗的なのにある部分ではやけに真面目なところ。

一歩間違えば安っぽい学園ドラマになるところが、奇跡的なバランスの上に成り立っている。この時期の出演者たちでなければ撮れなかった、桜が咲き誇る儚いひとときを捉えたような作品。登場人物のひたむきさを観て、過去に思いを馳せるのもいいかもしれません。


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