24
2015

映画「ジャスティス」

ジャスティス
Hart's War / 2002年 / アメリカ / 監督:グレゴリー・ホブリット / サスペンス、裁判

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大いなる目的のためなら小さな犠牲は許されるか。
【あらすじ】
第二次大戦下、ドイツのムースブルグ捕虜収容所で起きた殺人事件。事件の裏側にある人種差別と陰謀。



【感想】
戦争物に見えますが戦闘場面はほとんどない法廷物です。

ドイツ軍の待ち伏せにあって拘束され、収容所に送られたトミー・ハート中尉(コリン・ファレル)。親が上院議員のため、中尉ではあるもののまったく実戦経験はない。特権階級みたいな感じですが、仲間の目を考えると、こういう立場もつらいだろうなあ。エリートゆえの苦悩である。

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コリン・ファレルが若い! 今や筋肉ムキムキになってしまいましたが。演じる役も悪徳刑事か犯罪者のイメージが強いですが、ここでは名門イェール大学で法律を学ぶエリートです。こういう役は、メガネを掛けてる病弱で白皙の青年が似合いそうだけども。この頃からコリン・ファレルには隠しきれない筋肉がある。顔と同じぐらいの首の太さ、それに眉も濃いしなあ、男性ホルモンの塊である。将来、悪者になるでぇ~、とニヤニヤしながら観ると二倍楽しめます。

この映画は人種差別と、大きな目的のために小さな犠牲は許されるかという二つの問題が巧みに絡み合っている。収容所内では、同じ米国出身でありながら黒人に対する差別がある。罠に掛けられて殺された黒人のアーチャー少尉(ヴィセラス・シャノン、中)、そしてアーチャー少尉の復讐をしたとして逮捕されたスコット少尉(テレンス・ハワード、右)。戦争中なのにアメリカ人同士で争っている。

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収容所の所長から殺人事件の裁判を任されたマクナマラ大佐(ブルース・ウィリス)。

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この米軍大佐がかなり曲者なんですよね。ハート中尉はドイツ軍に尋問されて三日ですべてを自白し、収容所に送られてきた。一方、大佐は三十日もがんばっている。叩き上げの大佐は顔にはまったく出さないが、簡単に口を割ったハート中尉をまったく信用していない。叩き上げとエリートの対立はよく見かけますが、この図式いいですね。

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大佐のわかりにくさというのが、この作品の魅力だと思う。

ドイツ軍のトラックから一人のアメリカ兵がパンを取り、飢えているアメリカ兵にパンを投げてやる場面がある。大いに盛り上がる捕虜たちだが、そんなことは許されるわけもなくドイツ兵に撃たれてしまう。マクナマラ大佐は落ちているパンを拾うと、しばらく逡巡するがやはり捕虜に投げてやり、捕虜たちは歓声を上げる。撃たれる危険性と、収容所内でのカリスマ性の維持を秤にかけた行動で、大佐の計算高さを表すいい場面だと思います。単にドイツに反抗したかったのかもしれんけど。

大佐は人種差別についても考えを明らかにはしない。収容所内の多くの白人が差別感情を持っているため、統制を維持するためにあえて差別を黙認しているようにも見えるのだ。

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この裁判自体が仕組まれたものであり、ある大きな計画のための道具にすぎない。戦争物ではよくありますが、大きな目的のための小さな犠牲というのはどこまで許されるのだろう。ある人間の死が国のためになるとする。でも、犠牲者だって国の一部なのは間違いない。大多数のためであれば、本当に彼は犠牲になるべきなのだろうか。そして、そういった計画を立案した本人は上層部にいるので自分が死ぬことはない。ハート中尉は、みずからがエリートでありながら、上層部が持つ傲慢さが許せないのだった。簡単に言うと「おまえ、責任とれよ」という。

これ難しいですね。たしかに責任を取ることは必要ですが、優秀な人間がどんどん責任を取って死んでいくと、能力が劣った人間が作戦を立案することになる。すると余計に多くの死人が出ることだって考えられる。

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アメリカ人同士の裁判を開くことを許した変わり者の所長(マーセル・ユーレス)。ドイツ人でありながらイェール大学に留学しており、英語が堪能。苦みばしって味がある。大学の後輩だからか、気が向いたのか、ハート中尉に肩入れする。感情を表には出さないものの、実はこの人がもっともリベラルかもしれない。

人種差別、犠牲、誇り、それぞれが複雑に絡みあっている。そういうややこしいの好きな人にお勧め。


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