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2015

デタッチメント 優しい無関心

Detachment / 2011年 / アメリカ / 監督:トニー・ケイ / ドラマ
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心を閉ざした冷たい平和か、人と関わるわずらわしさか。
【あらすじ】
人と深く関わるのが面倒なので、心を閉ざして先生をやっています。



【感想】
監督が「アメリカン・ヒストリーX」を撮ったトニー・ケイなので、えらい重たい内容なのではないかと思ったら、やっぱりそうでした。

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荒れてる高校の代理教師として赴任したヘンリー(エイドリアン・ブロディ)。赴任初日から、先生に唾を吐きかける生徒を見たり、生徒から「ぶっ飛ばすぞ!」と目の前5センチぐらいですごまれるなど、歓迎されとるねー! わたしなら帰るよ‥‥。

怒鳴り込んでくるモンスターペアレントはいるわ、生徒は暴れるし言うこと聞かないわ、先生はちょっとおかしくなってる人もいたりで、てんやわんやなのです。教師は大変である。「おまえら全員退学じゃあ!」って言えないから。

主役のヘンリーを演じるエイドリアン・ブロディの「わたし、もう全部あきらめてますから‥‥」みたいな無気力顔はいいですね。無気力顔が似合う人だなー。

そんな過酷な状況でも戦っている教員たちはいる。

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生徒と面談をしたときに、怒鳴り散らしてしまったドリス・パーカー(ルーシー・リュー)。生徒が「卒業したらモデルか歌手にでもなる」と適当なことを言っているのが許せなくなる。ここはすごく印象的でした。今は若いからいいけど、あと10年後、20年後、そんなことで本当に食べていけるのか。若さを失ったとき、あなたに価値はあるのか。本当に自分のことを少しでも考えてる? そういう彼女の叫びが聞こえてくる。彼女には、貧困から犯罪、ドラッグ、売春などに手を出す生徒の未来がはっきり見えている。それに気づかない何も考えてない少女も許せないが、どうしてやることもできない自分に無力さと憤りを感じている。

彼女がここまで怒るのは良心があるからだろう。人生を台無しにすることを見過ごせないのだ。本当にひどい先生ならば「すてきな夢ね」と適当に送り出すかもしれない。将来、生徒が地獄に落ちようが、自分がそれを見ることはないのだから。

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そんなルーシー・リューに、ちょっとセクハラまがいの冗談を言って和ませるチャールズ・シーボルト(ジェームズ・カーン)。もう、たまらなくかっこいいですね。「ゴッドファーザー」で長男役ソニーをやってました。車をマシンガンで蜂の巣にしてましたが更正したなあ! 生徒にすごまれたりするのですが、さらっとかわしています。カーンにすごむとは。ゴッドファーザーの頃のカーンだったら、間違いなくマシンガンで蜂の巣である。小僧、命拾いしたな。

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同僚の先生(右)に声をかけるヘンリー(左)。「大丈夫ですか?」って、どう見てもダメである。良心があるほど苦しむのかもしれない。

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教育改革にすっかり疲れてしまった校長。何か一つだけを変えて状況が劇的に良くなるということはないのだろう。アメリカの教育現場の荒廃のすさまじさというか。

先生が一人の生徒につきっきりになれば、あるいはその生徒は救えるのかもしれない。何十人と生徒がいて、自分にも生活があり、体力や時間は限られている。ヘンリー自身も親の介護に時間をとられている。そんな状況で「すべての生徒をうまく指導しろ」というのは難しい。できる先生もいるかもしれないが、優れた個人を基準にして考えてよい話ではないんですよね。

この映画を観ると、先生に感謝したくなる。誰かが彼らをきちんと評価して労わなければならない。それは上司ももちろんだが、生徒の親なのではないか。だが、この映画に登場する親たちは、もはや敵といってもいいほどなのだった。恐ろし。

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担任が親とコミュニケーションをとろうにも、教育に興味のない親たちは話し合いにやってこない。それで「しつけは学校の仕事」とか言われたら、そりゃ先生もやる気なくすわ。なぜ、こんなにも子供を学校に押し付けるようになってしまったのか。で、なにかあれば「弁護士を連れてくる」って言うし。辞めさせてもらうわ!

ヘンリーが学校帰りに出会った少女エリカ(サミ・ゲイル、右)。これが映画初出演のようですが、とても魅力的です。

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まだ10代半ばに見えるが、家もなく体を売って暮らしている。人と関わることを避けているヘンリーだったが、レイプされてケガをしているエリカをほっておくこともできず家に入れてやる。そこから二人の共同生活が始まる。

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エリカが人への信頼を取り戻して、明るさを取り戻していく様子は良かったですね。

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エリカを救うことによって、ヘンリーも救われている。彼女を救うことで、再び生徒と向き合いだしたヘンリー。救うことと救われることは、ときとして同じ意味を持つ。重苦しいですが、学校映画として出色の出来だと思います。


※ネタバレしてます。
エリカがHIV検査を受けますが結果ははっきりとは出ません。ですが、病院から「至急本人に連絡したい」と伝言があるので陽性という意味なのでしょう。すべてを理解したヘンリーがエリカを迎えに行き、エリカが走ってきて抱きつくところはとても良かったです。無関心でいることは楽だけど、では、生きている意味とはなんなのだろう。

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