24
2015

映画「椿三十郎」

椿三十郎
1962年 / 日本 / 監督:黒澤明 / 時代劇

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若侍たちが頼りないので力を貸す。仕方ないなあ! 本当に仕方ないなあ! 今回だけだぞ。特別だぞ。
【あらすじ】
藩にはびこる汚職を告発しようとする若侍たち。危なっかしくて見てられないので、おじさんが助けます。


【感想】
昨年あたりからポツリポツリと古い映画も観だしたのですが「七人の侍」にしろ、この「椿三十郎」にしろ、現代の時代劇で及ぶ作品がないように思う。製作されてから60年以上経つというのにすごいことです。

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浪人椿三十郎を演じる三船敏郎の人柄が実にいいですね。無骨でズケズケと物を言うところはあるが、根は優しいから藩を憂う若侍たちをほうっておけない。ついつい助太刀してしまう。

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加山雄三や田中邦衛演じる若侍の一本気な清々しさもいい。正義感が空回りして逆のことばっかりやるから、三十郎に怒られてばかりいるけども。そこもたまらん!

登場人物と観客に与えられている情報が同じというのも本格ミステリーのように公正でいいですね。与えられた情報に対し、若侍と三十郎はしばしば反対の結論を出す。黒幕が誰かを推理する過程や、寺で敵に囲まれたときの切り抜け方も意見が異なる。観客も同じ情報しかないので、その限られた状況の中から、三十郎が鮮やかにピンチを脱していく様子に感心できる。よくできた推理小説を読んでいるよう。

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捕らわれている城代の奥方(入江たか子、左)と娘。暢気です。馬小屋で気持ちよく寝たりして。三十郎に救出されておきながら、あまり人を切ってはいけないとたしなめる。このとぼけ方が面白い。奥方は、生死を超越したところにいる。自分がたとえ殺されても、それはそれとして人を斬るのはよろしくないと言ってのける。懐の深さを感じさせる。

ここらへんの話は、勝海舟がボディガードの岡田以蔵に命を守ってもらいながら以蔵をたしなめたという逸話を思い起こさせる。ここからヒントを得たのだろうか。

勝は以蔵に「君は人を殺すことをたしなんではいけない。先日のような挙動は改めたがよからう」とたしなめた。この話は勝の自伝「氷川清話」にあるが、その際、以蔵は「先生それでもあの時私が居なかったら、先生の首は既に飛んでしまつて居ませう」と返しており、勝は「これには俺も一言もなかったよ」と述懐している。

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三十郎のライバルであり、大目付の手先の室戸半兵衛(仲代達矢)。椿三十郎の前作にあたる「用心棒」からのライバルですね。この二人のやりとり、殺陣の緊張感がすばらしい。

殺陣の場面はいくつかあるものの、血は一切出ないんですね。なぜかはわかりませんが。歌舞伎のように、振りだけで切られたと表現する約束事なのかな。あえて残虐な場面を見せる必要もないという。そう思っていたら、最後の最後に驚かされました。それまでの無血という約束が反動となって倍驚かされる。あまりに見事な仕掛け。カメラが切り替わらず、三十郎と室戸は無言のまま何十秒間か対峙する。まばたきしたら終わってしまうのではないかと思い、目が離せない。そこから一瞬の決着。

ユーモラスな雰囲気を漂わせつつも、締めるところは締める。三十郎の頭の回転と強さ、若侍たちの正義感、城代や奥方など出番は少ないながら抜群の存在感、ライバル室戸の怖さ、役者の魅力の引き出し方がうまい。そして殺陣の緊張感。最高の娯楽時代劇だと思います。

三十郎の保護者っぷりが本当に微笑ましい。ああ、もうたまらんよ!

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