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2015

それでも夜は明ける

12 Years a Slave / 2013年 / イギリス、アメリカ / 監督: スティーヴ・マックイーン / ドラマ
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暴力による恐怖は、良心を簡単に押し潰す。
【あらすじ】
仕事に出かけたら拉致されて、南部に奴隷として売り飛ばされた。



【感想】
「それでも夜は明ける」という題名は、人種差別を描いた映画「遠い夜明け」を思い出してしまった。どちらも重苦しい映画である。

この映画は、1841年からの12年間を奴隷として過ごしたソロモン・ノーサップの回想録が基になっている。1861年からアメリカ南北戦争が始まるので、約20年前の出来事ですね。

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1841年。ソロモン(キウェテル・イジョフォー、左から二人目)はニューヨーク州サラトガで家族と暮らしていた。自由証明書によって権利を認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた。自由黒人という言葉あるということは、それ以外の黒人は奴隷だったのだろうか。ワシントンで開催されるショーの演奏を引き受けたソロモンは、仕事終わりに酔いつぶれていたところ、何者かによって拉致され奴隷商人に売り飛ばされてしまう。

ソロモンという名前も取り上げられ、南部で農園を経営するフォード(ベネディクト・カンバーバッチ、左)に買われる。ベネディクト・カンバーバッチは、イギリスでの人種差別を扱った映画「アメイジング・グレイス」にも出てますね。

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白人が黒人を奴隷として扱うといっても、ちょっとずつ温度が違うんですね。フォードは他の白人に比べると、まだ奴隷を人間扱いしている。ソロモンの意見を取り入れて材木の輸送手段を改善したり、彼にバイオリンを与える。

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教育のあるソロモンはフォードに重宝がられるが、一方で他の黒人奴隷から妬まれることも。

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フォードに雇われている大工のジョン・ティビッツ(ポール・ダノ、右)は、有能なソロモンが気に入らない。ソロモンに難癖をつけ、首にロープをつけて吊るしてしまう。ソロモンは、足が地面に付くか付かないかの状態で吊るされたまま何時間も放置される。彼が吊るされているというのに、他の黒人たちは誰も彼を助けようとはしない。子供たちはふざけあい、女たちはおしゃべりをしている。まるでソロモンが見えてないようだった。一人だけ、ソロモンに水を飲ませてくれる女がいるが、彼女もやはりソロモンを降ろしてはくれないのだ。もしソロモンを助ければ、自分も同じ目に遭うかもしれない。それは誰にも責められない。

ポール・ダノは、こんな嫌な役をよく引き受けたと思います。やる方も絶対に嫌だと思うんだけども。

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そんで、この人がまた輪を掛けてひどい人でしたね。ソロモンは綿花畑を所有するエップス(マイケル・ファスベンダー、右)に売られる。マイケル・ファスベンダーのネチネチした演技は最高でしたね。奴隷への鞭打ちをソロモンにやらせる。ソロモンもまたそれを拒むことができないのだ。残虐な拷問への恐怖は良心を押し潰してしまう。

ソロモンは放浪しているカナダ人バス(ブラッド・ピット)によって救われることになる。ブラッド・ピットが出たとき、一目でいい人とわかってしまったので、もうちょっと無名の人が良かったのではないか。人種差別を嫌悪し、雇い主エップスにくってかかる。ちょっといい人すぎるというか、ほとんど現代人なんですよね。そんな人、おる?

ソロモンが助け出されて馬車で帰るとき、そばで泣き崩れている奴隷がいる。彼女は一緒に救い出してほしかったのだろうがソロモンには何もできない。これは序盤にソロモンが他の奴隷と拉致されて売り飛ばされたとき、奴隷の持ち主が買い戻しに来たときとよく似ている。彼は、喜んで主人の元に戻り、船の方を振り返ることはなかった。やはり彼も、ソロモンたちをどうしてやることもできなかったのだ。この対比がよかったですね。

この映画はハッピーエンドのようで、実はそうではないのだろう。彼のように救われた人間はほんの一握りで、他の人々は救われることなどなかったのだから。

人間を所有物とし、暴力を肯定するような制度が組み込まれると、人はどこまでも残酷になれるのかもしれない。白人にしろ、黒人にしろ、内心では制度に反対している人も声を上げずらい状況になってしまう。アメリカはこうしたひどいことをやりつつも、のちにそれを内部から強烈に批判して作品にする。こうまで自己に対して批判的な態度を取れる国、その作品が評価される国というのも珍しいのではないか。そうは言っても、また違うひどいことやりそうで怖いけど。

現代でもいろいろとひどい事件はあるが、こういった映画を観ると世の中は少しずついい方向に向かっていると思える。楽観しすぎだろうか。





こちらは、イギリスで奴隷廃止法案を通すため戦った政治家ウィリアム・ウィルバーフォースを取り上げた作品。ベネディクト・カンバーバッチも、イギリス首相役で登場します。
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