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2015

ダラス・バイヤーズクラブ

DALLAS BUYERS CLUB / 2013年 / アメリカ / 監督:ジャン=マルク・ヴァレ / ドラマ、実在の人物を基にした映画
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私利私欲でゴー!
【あらすじ】
HIVに感染しました。



【感想】
HIVとはヒト免疫不全ウィルスというウィルスの名称で、エイズはHIVに感染することによって発症する病気。病気には「ニューモシスチス肺炎」などの代表的な病気が23個決められていて、それらの1個以上を発症した状態をエイズと呼ぶ。

HIVとエイズの違いもよくわからないまま観ていました。この映画は、HIVについて医者もまだよく理解していない1980年代が舞台。医者ですら「ホモの病気」という認識しかなかったり、世間の人も同じように考えており、偏見にまみれた時代だった。

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電気工でカウボーイのロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)はHIV陽性と診断され、医者から余命30日と言い渡される。ロンは独身で気ままな生活を送っている。売春婦とのセックス、麻薬の回し射ちなどをしているため、どこで感染したのかすらわからない。ロンを演じたマシュー・マコノヒーはガリガリに痩せている。それもそのはず、この役のために21キロも減量をしている。顔も変わったが、肉の落ちた尻や太腿、筋張ったふくらはぎなどが痛々しい。

しかし、突然に「余命30日」と宣告されるのが恐ろしい。ふつうの人間ならショックで塞ぎこみ、そのまま死んでしまうだろう。ロンは医者の言うことを鵜呑みにしない。医者とて病気や患者のことを完全に理解しているわけでもない。「この人は本当に信用に値するのか」と疑ってみることが必要なのだろう。実際、医者や製薬会社が信用ならないものだったことが後ほどわかってくる。患者はまるで実験動物のようだった。

ロンの「生きたい」というエネルギーは尋常ではない。医者の言うことに耳を貸さず、どうにか生きられる方法はないか模索し、エイズについての勉強も始める。

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同じ病院に入院していたレイヨン(ジャレッド・レト)は、HIVの新薬AZTの被験者になっている。ロンは、レイヨンにAZTを分けてくれるよう頼むが断られる。だが、それでもあきらめない。病院職員を買収し、臨床試験用のAZTを盗ませるのだ。まあ無茶な人だよ。

しばらくは、盗んだAZTを酒で飲むという毎日。絶対にやったら駄目な飲み方をしておる。AZTが効いたのか、なんとか30日以上生き延びることに成功する。だが、病院でAZTの管理が厳しくなったため、メキシコでの入手に切り替える。メキシコで出会った医者から、新しい抗HIV薬を仕入れることに成功する。

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AZTには副作用や毒性の強さなどの問題があり、継続して使用することは望ましくないケースもあった。そのことを医者や製薬会社は隠している。ロンはメキシコで手に入れた抗HIV薬をアメリカで売りさばくことを思いつく。そして「ダラス・バイヤーズクラブ」という会社を設立。「密輸してガッポガッポの大儲けじゃあ!」って、死にかけてるのに商魂のたくましさがすさまじい。会社の設立当初、ロンは金儲けしか考えていない。昔の漫画で、目が$(ドル)の状態になったりしますがあんな感じですよ。

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ロンは、性同一障害のレイヨンを強烈に差別しているが、薬を売るためには同性愛者のネットワークが不可欠なため、レイヨンの手を借りることを思いつく。お金儲けのためなら「ホモ野郎」と罵倒しているレイヨンとすら組むのだ。さすが金の亡者。ちなみに、レイヨンを演じたジャレッド・レトもこの役のために18キロ減量したという。

同性愛者やエイズ患者を差別していたロンが、みずから罹患し、同性愛者のレイヨンと助け合うことにより、偏見が取り払われていく。いつからか、レイヨンの体調を心配するようになり「加工食品は食べるな」とか「酒や麻薬はやめろ」とか命令するようになる。え、おまえがそれを言う? ってなる。こないだまで麻薬の回し射ちとかしてたのに‥‥。命令されたレイヨンも、満更じゃなさそうな様子で、ちょっとかわいらしくもあるんだけども。なにこの雰囲気。

レイヨンは酒や麻薬をやめられず、ついに体調を崩すことになる。一方、ロンは超人的である。ふつうはあそこまでの強さで行動できない。レイヨンのようにすがる物を探し、みずからの弱さに溺れるように死んでいくのがふつうだろう。その弱さは痛々しく悲しい。わたしはロンではなくレイヨンに強く共感した。

やがてロンは、効果のある未承認薬を認可しないFDA(アメリカ食品医薬品局)との戦いを始める。エイズ患者の苦しみを代弁した戦いのようだった。セックス、酒、ドラッグが大好きで、偏見のかたまりだったカウボーイが「生きたい」「お金儲けがしたい」という目的で会社を始めただけなのに、それが結果的にエイズに苦しむ多くの人々を救っていくことになる。利己的なだけのロンが、いつの間にか自己犠牲を厭わない利他的な行動をとり、薬品業界を大きく変えていったのだ。

悪とか善というのは絶対的ではなく、それはそのときの状態を表しているにすぎず、ロンのように劇的変化を遂げることもあるのだろう。どうしようもないクズが聖人のようになることもありうるのではないか。絶対的な悪など存在しないのではないか。人は、良い方にも悪い方にもいくらでも変わることができる。そして、生きたいという執念に成し遂げられないことはない。そんな希望を感じる作品でした。

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