07
2015

鑑定士と顔のない依頼人

LA MIGLIORE OFFERTA/ / 2013年 / イタリア / 監督:ジュゼッペ・トルナトーレ/ 恋愛、ミステリー
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老いらくの恋。おじいちゃんを弄ばないで!
【あらすじ】
美術品の鑑定を頼まれたら、依頼人に惚れた。歳の差が40ぐらいあるけど気にしない。



【感想】
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天才的鑑定眼を持つ、オークショニア(オークションを取り仕切る競売人)のヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)。またこの人が頑固でねえ、行きつけのレストランでの行動に人柄がよく表れている。店は誕生日のサプライズとして小さなケーキを出す。実はヴァージルの誕生日は翌日で、レストランは日を間違えていたのだ。ふつうの人ならば、一日ぐらいのことだからとお礼を言ってケーキを食べそうだが、この人は手をつけない。ケーキに立てられたロウソクが燃えつきるのをじっと見つめているのだ。食べようよ‥‥。

ヴァージルは物に直接触れることを嫌い、常に手袋をつけている。鑑定士としての癖もあるのだろうけど、あらゆる人に対して心を閉ざしている印象がある。美しいものだけを相手にしてきたヴァージルにとって、直に人と触れあうのが恐ろしいのかもしれない。

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多忙な毎日を送る中、ある屋敷の美術品鑑定を頼まれる。ところが無礼にも依頼人は姿を見せない。「わ、わしを誰だと思っておるのだ! ヴァージルじゃぞ!」と、プンスカするのがかわいい。それでも、屋敷の地下で見つけた奇妙な歯車が気になり、屋敷に通うことになる。この歯車をエンジニアのロバート(ジム・スタージェス)に見せたところ、中世のオートマタ(自動人形、からくり機械)の部品であることがわかる。

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ロバートは、機械にも女性にも強い。女性客の依頼品をただで修理して、キスしてもらったりデートに誘ったりしている。その仕事、紹介してくれんかね。何も直せないけど。ポンコツですけど。

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ロバートの店の内装もいいんですよね。電子機器にも精通しているのに、古めかしい物もたくさん置いてあって。

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屋敷に通いつめ、依頼された鑑定を行いつつ、地下でオートマタの部品を収集するヴァージル。やがて、屋敷に閉じこもる謎めいた依頼人クレア(シルヴィア・ホークス)と出会い二人は恋に落ちる。広場恐怖症という変わった病気のクレアと、人に心を閉ざしてきたヴァージル。似た者同士の二人が心を通わせていく様子は良かったですね。

ただ、ベッドシーンとなると抵抗があった。お互いが若いというのは当然良くて、逆にお互いが年老いているのも、それはそういうものだと思う。だが、60過ぎの初老のヴァージルと20代のクレアとなると生々しい感じがする。やはり、あまりに歳の差がありすぎて、いびつに見えてしまう。え、そんなことない? きれいに見えた? そーなんだ。僕も僕も。全然いやらしいことを考えずに観られました。ほんとほんとほんとほんと。

これは歳は違えど、似た問題を抱える二人の恋愛物語なのかと思っていましたが見事に裏切られた。ヴァージルではないが、あっけにとられてしまった。だまされたい人にお薦めです。






※ネタバレしています。
いくつか疑問に思ったことの整理など。

・黒幕と動機について。
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ビリー(ドナルド・サザーランド)が、自分の絵を認めないヴァージルに対して行った復讐なのだと思う。長年のパートナーでありながら、そうせざるを得なかったビリーのつらさというか。この人は、お金はいらなかったと思うんですよね。復讐といっても陰惨な動機ではなく、ただ、ヴァージルに自分の絵を評価してほしかったという。

屋敷の賃料や、屋敷においてあった美術品をどう用意したかですが、これはヴァージルとビリーがオークションで稼いだものから、ビリーが用意したのだと思います。

ビリーが全部の計画を立てたのか、それともロバートと対等の共犯者であったのかはよくわからない。


・ヴァージルのその後。
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ヴァージルはクレアたちにだまされたショックでボケてしまう。最後は老人ホームに入っているように見える。だが、ここに部下だった男性が訪れ、新聞などと一緒に封筒を渡す。これはクレアからの手紙だったのではないか。

「いかなる偽物の中にも本物が隠れている」というセリフはヴァージルが口にしたものだった。クレアはヴァージルをだまし、散々嘘をついたが、プラハの広場にあるナイト&デイというレストランの思い出は本当だったのかもしれない。そこでヴァージルを待つという内容だったのかもしれない。

ヴァージルは、なんだかわからないリハビリの機械のような物を使ってるし、やがてプラハの広場に引っ越している。そして実際に存在したナイト&デイでクレアを待っているのだ。このレストランの内装が奇妙で、時計の歯車が飾られている。まるで、二人の出会いのきっかけになったオートマタの部品のように見える。


・クレアの気持ち。
ロバートのガールフレンドが「ロバートは最近、クレアの話ばかりしている」と語る場面がある。ロバートとクレアは実は恋人同士だったのかもしれない。

だが、クレアがヴァージルを愛したのも本当で、それは「偽物の中の本物」だったのではないか。ヴァージルが暴漢に襲われる場面がある。ビリーが計画を立てたとすると、ヴァージルの身に危険が及ぶようなことはしないだろう。路上に倒れているヴァージルの元に駆け寄ったクレアは、本当にヴァージルを心配していたのではないか。


そんなことを考えると、これは実によくできた映画だと思いました。絵というのはモデルがいるわけで、多くの美女に囲まれていたヴァージルでしたが、でも本当の生身の女は知らない。どんな名画も、生身の人間を写し取った偽物と言うこともできる。ヴァージルはあそこまで悲惨なだまされ方をしたにもかかわらず、ナイト&デイでクレアを待つ。偽物に囲まれて生きてきたヴァージルは、初めて本物であるクレアに出会って目が開かれたのかもしれない。ヴァージルはもはや手袋をしていない。本物に触れる喜びを知り、心の壁が取り払われたのだろう。ビリーはヴァージルに復讐しつつも、ヴァージルに人と触れ合うことを望んだようにも思えるのだ。
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