12
2015

思い出のマーニー

2014年 / 日本 / 監督:米林宏昌 / ファンタジー
名称未設定-1
自分を嫌いな人、誰も信じられない人たちに。
【あらすじ】
学校にも馴染めないし、喘息持ちなので田舎に療養にやって来たら、気が合いそうなのがいた。



【感想】
ワクワク感がないということを知人が言っていて、ジブリ作品を観るとどうしても「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」などの冒険やファンタジーを求めてしまうのかもしれない。宮崎駿引退後は、ジブリはこういった数々の巨人の幻影と戦っていかねばならないのだろう。大変ですなー。他人事なので無責任に応援したい。

もっともそれは観客側にもいえることで、常に宮崎作品との比較から逃れられない。

名称未設定-2

「思い出のマーニー」は宮崎作品のような舞台の大きさは感じない。ものすごく個人的な物語なんですよね。「耳をすませば」や「魔女の宅急便」も世界の危機などとは無縁な話だけど「思い出のマーニー」はより個人的で、主人公杏奈の内面に重点が置かれる。

こじんまりとしていて、北海道の田舎町が舞台。杏奈は、芯が強くて、凛々しくて、決然とした意思を胸に秘めているというタイプではない。誰も彼も嫌いでいじいじしていて、何よりも自分のことが一番嫌いという面倒くさい性格。おまけに喘息持ちで、学校にもうまく馴染めない。マイナス要素を煮詰めたような主人公。おまえ、本当に主人公でいいのか。それも今までのジブリと違っていて面白い。

両親が事故死したことにより、杏奈は親戚の頼子に引き取られて暮らしている。だが、頼子の愛情を信じることができず関係はギクシャクしている。頼子は、杏奈の喘息療養も兼ねて、親戚の大岩夫婦に杏奈を預けてみることにした。田舎にやってきた杏奈は、誰も住んでないはずの湿っ地(しけっち)屋敷でマーニーという不思議な少女と出会う。

名称未設定-3

杏奈とマーニーは、お互いにピーンときてしまったのですぐに親友に。序盤は、杏奈が心境や感じたことを独り言でわざわざ口に出すところが気になった。全体的に説明過多のような。杏奈の目の色が青いことをふとっちょ豚が指摘するところとか。もうなんでもかんでも口に出すんだからー。

絵は美しく、湿っ地屋敷や風景にひきつけられました。

名称未設定-g2
名称未設定-1g

杏奈は自分の不幸な境遇を嘆き、マーニーをうらやましがる。だが、マーニーはマーニーで悩みを抱えている。両親の愛情は薄く、召使いたちにいじめられ、屋敷に閉じ込められている。自分以外の悩みというのは聞いてみても「なんだそんなことか」というものが多い。特に子供の悩みは小さい。杏奈やマーニーが抱える悩みも小さい。でも、それは大人の視点から言えることなのだろう。悩みの大きさが1として、心の容量が2しかないなら、悩みは心の半分を占める。成長して、心の容量が10ぐらいになれば悩みは全体の1/10でしかない。もう少し時間が経てば、悩みはそれほどの問題ではなかったと気づくが、悩みの渦中にいる当事者にそれを言っても意味はない。今まさに押しつぶされそうなのだから。

子供特有の世界の狭さ、本当はたいしたことではないのに、それによって世界が終わるような恐怖感。この物語の評価が分かれるのは、こういった部分に共感できるかどうか、親との関係に問題を抱えていた(抱えている)など、観客がどんな子供時代をおくったか、そこに深く関係がありそう。この映画に共感できないほうが、楽しい人生かもしれない。

杏奈が、マーニーにサイロ(穀物や飼料の倉庫)で置き去りにされ怒る場面がある。マーニーは理由も言わず、自分のことを許してほしいと杏奈に訴えかける。杏奈はマーニーを信じて許し、それが杏奈自身を楽にする。

悩みというのは不思議なもので、本人が重大だと捉えていると悩みになるが「これ、どうでもいいことかも」と思えば、悩みにはならない。杏奈はマーニーを許すことによって、嫌いだった自分自身も許せたし、頼子を信頼することもできるようになったのではないか。

「思い出のマーニー」は壮大な冒険ではないものの、杏奈が自分自身を乗り越えていくという様子はわたしには冒険に見えた。宮崎作品とは違うけれど、こういうジブリ作品もとてもいい。



※マーニーの存在について。
マーニーは本当にいたのだろうか。杏奈が作り出した空想上の友人なのか。マーニーがした昔話を杏奈がどこかで憶えていてマーニーを作り出したのかもしれない。それとも祖母であるマーニーが辛い子供時代を送っており、その辛さから逃れるため、杏奈と引き合い、時間を越えて出会ったという解釈もできる。この部分はあまり重要ではないのだろうけど。

最初は、杏奈が葬式のときに抱えていたマーニーそっくりの人形がマーニーというオチなのかと思った。あの人形は、誰が杏奈に与えたのだろう。母親なのか、マーニーなのかよくわからない。だが、あの人形は、杏奈のそばにいつもいる、見ていてくれる人がいるという杏奈へのメッセージなのかもしれない。


関連記事
スポンサーサイト

0 Comments

Leave a comment