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2015

プリズナーズ

PRISUNERS / 2013年 / アメリカ / 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ / ミステリー
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娘を守るために悪魔になった父親。
【あらすじ】
娘が誘拐されました。



【感想】
2015年最後に観たミステリーがこの作品でした。そんで2015年でもっとも良かったミステリーがこれという。最後に当たりを引きましたよ。緊張感のある重苦しい作品です。アメリカの年間誘拐件数は、映画「ザ・コール 緊急通報指令室」の予告編で年間80万件と紹介されていた。これは1日に約2200件ということになる。ちょっと信じがたい数字です。そして、誘拐があってから1週間が経過してしまうと、被害者が生還する確率は50%を切るという。このタイムリミットはアメリカ人にはわりと有名な話なのかもしれない。主人公もこの統計を知っており、それが彼の過激な行動に拍車を掛けていくことになる。

ペンシルヴェニア州の小さな町で工務店を営むケラー(ヒュー・ジャックマン、左)。二人の子供と妻に囲まれ、幸せな生活を送っている。

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感謝祭の日を共に過ごすため、ケラーは家族を連れ、友人であるバーチ一家を訪れる。

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のんびりと休日を過ごしていた家族だったが、やがてケラーの娘とバーチの娘が姿を消していることに気づく。慌てて周囲を探し回るものの、娘たちはどこにも見当たらない。警察もすぐに対応し、敏腕なロキ刑事(ジェイク・ギレンホール、右)が捜査にあたり、さっそく怪しい人物を捕まえる。

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しかし、事件の容疑者アレックス(ポール・ダノ、右)はなかなか口を割らない。彼は知的障害があり10歳程度の知能しかなく、結局証拠不十分で釈放されてしまう。アレックスは限りなく怪しいんですよね。もう誰が見ても何か知っているぞという。

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警察の捜査に納得のいかないケラーは、アレックスを密かに監禁し、拷問を加えて娘の居場所を吐かせようとする。ケラーの拷問の様子が恐ろしい。洗面台にアレックスの指を固定し、ハンマーで洗面台を狂ったように叩き壊す場面がある。演技とわかっているのに、本当に指を潰してしまうんじゃないかと思うほどの怖さがあった。うう‥‥、いつものヒュー様と違う。ちょっと抜けてるけど、心優しいウルヴァリンのはずなのに‥‥。怖すぎるわ。血塗れで顔面をパンパンに腫らしたアレックスの痛々しさったらない。

そして、ケラーの友人で、一緒に娘を誘拐されてしまったバーチ夫婦も存在感があった。この夫婦はいなくても話は成立するのかもしれない。だが、過激なケラーに対し、終始冷静なバーチという対比が良かった。

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恐ろしい拷問で娘たちの居所を聞き出そうと逆上するケラーに対し、バーチ(テレンス・ハワード、中)は落ち着いている。「間違えていたらどうするんだ」とケラーを制止する場面も。ケラーは、顔が腫れあがるまでアレックスをボコボコに殴る。バーチは、理性的なのか、気が弱いのか、自分ではアレックスを殴れない。アレックスを犯人と決めつけるケラーに対し、バーチは客観的で、それゆえに苦悩する。

だが、ケラーの拷問をとめようにもアレックスの態度は限りなく怪しい。とめたくてもとめられない。もうどうしていいかわからなくて、時間が経つのをただ待つような優柔不断な態度をとってしまう。バーチの煮え切らない態度は卑怯かもしれないが、わたしはケラーよりもバーチに感情移入してしまった。いやもうこうなりますって、実際。

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映画「ドニー・ダーコ」で、ボーっとした感じの高校生を演じていたジェイク・ギレンホールですが、この映画では寡黙で凛々しいロキ刑事に。ふだんは、完全に感情を押し殺したような冷静さを保っている。口数が少なく、冗談も言わず、仕事熱心で責任感があって、浮かれてバカ騒ぎする感じもない。アメリカ人離れしている。などと書けば、アメリカ人に怒られそう。

たいへん良かったですよ。ジェイク・ギレンホールの代表作になったのではないか。

印象的だったのはケラーの奥さんの言葉。ケラーがアレックスを拷問していたことを知った後で、それでも「彼は善人よ」と言い放つ。彼女の言葉に半分は同意できる。子供のためであれば悪魔にもなれる夫というのは、それが法律に違反しているとはいえ頼もしいかもしれない。だが、拷問されたアレックスも、また誰かの子供であるのだ。

たいへんよくできたミステリーですし、登場人物たちもそれぞれすばらしかったです。一つ、よくわからないところがあって、容疑者宅にロキ刑事が踏み込んだとき、怪しげな箱がいくつも置いてある。いかにも子供の遺体が入ってそうな大きさで、ドキドキしながら箱を開けるのだけど、中からなぜか蛇が出てくるんですよね。

あのときのロキ刑事の「なんだよ! びっくりさせんなバカ!」みたいな表情が最高におかしい。そもそもなんで蛇が入ってんだろ。面白いから? ちょっと笑ってしまった。ええ、そういう心和む場面も入った映画ですよ。他に和むところはない。基本的に殺伐としております。お薦めです。


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