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2016

ペリカンマン

Pelikaanimies / 2004年 / フィンランド / 監督:リーサ・ヘルミネン / ファンタジー、ドラマ
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【あらすじ】
ペリカンが街にやってきた。



【感想】
フィンランド映画は景色がきれいなので、それだけで観てみたくなりますね。人間の世界にやってきたペリカンと、両親の離婚に悩む少年が出会い、お互いに成長していく物語です。

少年エミルの両親は離婚。エミル(右)と母親は新しい街に引っ越してくる。一方、浜辺で人間の服を盗んだペリカン(左)も、人間に化けてヒッチハイクをしてエミルの住む街へやってくる。なぜペリカンが人に化けようとしたか、街へ来たかなどの説明は一切ないんですね。もう来ちゃったんだから仕方ない。フットボールアワーの後藤さんに似ているのも仕方ない。

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最初は人間界になじめない様子のペリカンマン。野宿して怒られる。鳥だから仕方ないけども。

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出てくる人々がとても親切でいいですね。劇場のもぎりのおじさんは、切符を持っていないペリカンマンを「音楽を愛する人は歓迎だよ」と通してくれて、後日、仕事まで紹介してくれる。

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ペリカンマンとエミルは同じアパートに住んでおり、すぐに友達になる。大人たちは、ペリカンマンの正体に気づかないが子供たちは一目で彼がペリカンということに気づく。だからといって、ペリカンであることを特に気にしないのも面白い。「(人間は)見たいものしか見ない。人間は幻影を信じる」というペリカンマンの言葉は、大人たちの偏った物の見方を指摘しているのだろう。後半にペリカンマンが鳥だとわかったとき、大人たちは騒ぎ出し、ペリカンマンを動物園に送ってしまう。たしかにペリカンマンは挙動不審だけどさあ。今まで仲良くやってきたじゃんかあ!

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人間の世界を勉強するペリカン。そんで劇場のバレリーナを口説きます。手が早いな、ペリカンのくせに。

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物語は「忘却」が一つのテーマになっている。この映画は子供も楽しめるように作られていますが、エミルとペリカンマンが別れる場面の会話はちょっと難しい。

ペリカンマン「これからは鳥として生きていく。学んだことは忘れる」
エミル「笑ったり歌ったり話すことを? 何もかも? それでいいの?」
ぺ「本当にすばらしかった。でももう終わりだ。多くを学び、自分のあるべき姿を知った」
エ「それは鳥なの?」
ぺ「そうだ。鳥として生きるには忘れなければ。僕はまた不死身にならなければ」
エ「どういう意味?」
ぺ「動物は不死身だよ。彼らは知らないから。いつか死ぬことを。今、僕の新しい人生が始まる。そしてこの人生に終わりはない」
エ「僕を忘れる?」
ペ「忘れる」

面白いのは、あんまり親切じゃないところ。ペリカンマンは難解なことを言い、エミルは「どういう意味?」と訊いても、ペリカンマンはエミルのほうをろくに見もしないし、丁寧に説明をしない。エミルの位置まで降りてくれない。子供用になんでもかんでもわかりやすくしないのが、とてもいい。「あなたにはまだ理解できないことがある」と伝えることは学びの意思に繋がる。そのわからなさが「考える」という贈り物になる。正しい結論にたどり着くかどうかなんて、つまらないことだ。

驚いたのは、エミルが「僕を忘れる?」と訊き、きっぱりと「忘れる」と答えたところ。ちょっと笑ってしまった。いや、これはねえ、ふつうならば「僕も君のことを忘れない」と答えて、めでたしめでたしですよ。だけど、ここで変にごまかさないところが誠実に思えた。なぜペリカンマンは「忘れる」と答えたのか。

ペリカンマンが、環境汚染や戦争など、人間の振る舞いに疑問を感じている場面がある。人は忘れない能力を使って発展してきた。では、忘れる能力を使うものは何かといえば、自然だろうか。自然は忘れるから発展もできない。だが発展しないからこそ、環境は守られ、地球は再生できたという解釈なのだろうか。忘れることが永続性に繋がり、それが不死身という表現になるのかな。ただ、単に死を意識しないことにより生を謳歌する、それこそが不死身という見方もできるけど。よくわからない。

「忘れる」と言われた後、エミルは「僕は絶対に忘れない」と返す。これには決然とした意志を感じる。映画冒頭、エミルは父親との会話で忘却について語っているが、その会話とこの部分は対になっている。ここにエミルの成長を感じた。

エミルは、ペリカンマンが「忘れる」と言っても、まったく残念がる様子も恨みがましい様子も見せない。それはペリカンマンが自然の側に立ち力を尽くし、エミルは人間の側に立って力を尽くす。そうやって生をまっとうすることが本来の生き方であり、ペリカンマンとエミルの友情は、自然と人間の共生が可能であることを示しているように感じさせる。そのことがエミルには理解できている。だから不満そうな様子も見せないのではないか。この映画、本当にこんな難しい話かなあ。フットボールアワーの後藤さんが出てるのに。

ユーモラスで、のんびりした雰囲気なのに、ところどころみょうに哲学的になる。ちょっと毛色の変わった映画ですね。



2016年1月7日~2016年2月6日まで、GYAO!で無料配信しています。

あ、そうそう、アパートに据え付けられていた洗濯機二個分ほどの大きさがある巨大な冷凍庫ですが、フィンランド人は夏に一年分のブルーベリーを収穫して冷凍庫に保存してちょっとずつ使うそうで、だから冷凍庫が巨大というツイート(駐日フィンランド大使館)を見ました。なるほど、鮭とか入れておくためかと思った。
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