04
2016

8月の家族たち

AUGUST: OSAGE COUNTY / 2013年 / アメリカ / 監督:ジョン・ウェルズ / ドラマ
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崩壊する家族。最強の母の大暴れ。
【あらすじ】
季節は八月、夏真っ盛り。父親の失踪を機に、久しぶりに田舎に集まった家族。再会を喜ぶどころか、食卓は戦場のような有様に‥‥。ポスターは左のすっきりしたものの他に、揉めてるやつ(右)もありました。だいたい右のような映画ですよ。



【感想】
原題のOSAGE COUNTY(オーセージ郡)というのは、アメリカのど真ん中オクラホマ州に位置します。家族が集まるといっても、日本とは移動距離が違うから大変でしょうねえ。

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オクラホマ州に接している北のカンザス州にもオーセージ郡という地名がある。オーセージというのは、この地域の原住民のオーセージ族のことで、オーセージ郡はネイティブアメリカンの居留地。家政婦として、この一族に雇われたジョナ(ミスティ・アッパム)はオーセージ族の末裔なのでしょう。しかし、この家、家政婦として勤めるのは恐怖でしかない。メリル・ストリープが狂人すぎて怖い! というか、みんなギスギスしすぎなんだよお!

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当初、撮影はオクラホマで行わない予定だった。だが、ロケハンをした際に見た家を監督が気に入り、買い取って撮影したとのこと(公式サイト)。借りるのではなく買うというのが、さすがハリウッド。豪儀なお話。屋敷もですが、家具や食器もすてきですね。

で、内容はといえば久しぶりに会った家族が大喧嘩を繰り広げるというもの。喧嘩ものといえば「おとなのけんか」というコメディを思い出す。あちらは素直に笑えるものの、こちらはちょっと笑いづらい。問題が重いんですよねえ。

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この女主人バイオレット(メリル・ストリープ、左)の意地悪そうなお顔! 家族にとって触れられたくないことをどんどん指摘していく。みんな生活がうまくいってないのだった。長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)は夫(ユアン・マクレガー)と別居、娘(アビゲイル・ブレスリン)は反抗期真っ盛りでタバコやマリファナにも手を出している。

次女はドジばっかりしている男と付き合い、三女は詐欺師まがいの男と付き合っている。もうみんな問題山積みで、母親であるバイオレット自身も、口腔癌を発症して苦しむ中、さらに軽度の認知症もわずらっている。病気や薬の影響もあるのだろうけど、家族に対して「だって事実でしょ?」と、ひどいことを言いまくる。

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親戚が集まったとき、昔の写真を見てあれやこれや言って楽しむというのはありますね。こうして見ると、仲良さそうなんだけどねえ‥‥。家族というのは大変だ。

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この映画は「事実」が鍵の一つになっているように見える。バイオレットの義弟チャールズ(クリス・クーパー、左)は出来の悪い息子リトル・チャールズ(ベネディクト・カンバーバッチ、右)を気にかけ、常に励ましている。でも、この親子は血が繋がっていない。妻が浮気してできた子なのだが、その事実をチャールズは胸に秘め、息子を温かく見守っている。

また、今回、家族が集まるきっかけとなったバイオレットの夫の失踪だが、夫もある秘密を抱えたまま死んでいく。何もかも「だって事実でしょ?」と、ぶちまけてしまうバイオレットに対し、事実には目をつぶって暮らしていた者もいる。

映画冒頭に、詩人T・S・エリオットの詩の一節「人生はとても長い」が引用される。この語句が含まれる詩「The Hollow Men」(空ろな人間たち)を読んだが、難解で意味がわからなかった。「人生はとても長い」という語句だけに意味を絞っても、いかようにも解釈できる。この映画だと、人生を送っていけば、人には言えない秘密や悩みをいくつも抱えることがある、と解釈できそうだ。

それらが事実だからといって、すべてぶちまけることが正しいのだろうか。正しければ、人を傷つけてもかまわないのか。そのようにとれるんですよねえ。全部をぶちまけて家族を滅茶苦茶にしてしまったバイオレットを見ると。ただ、秘密を抱えたまま生きていくのも苦しいのだろう。ぶちまけたい気持ちだってわかる。

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長女バーバラはバイオレットと大喧嘩したのち、家を飛び出す。彼女は途中で車を止め、いったん外に出て、フッと微笑んだ後にまた車を走らせる。Uターンして、バイオレットが待つ家に戻る様子はない。彼女はバイオレットを許したのかもしれないが、すぐに家に帰って関係を修復するつもりでもなさそうなのだ。母を憎みつつ、また同時に愛してもいて「ほんとにしょうがないなあ」ぐらいの気持ちなのだろうか。これを観た後、楽しい気分になれるほど人間はできてないわけで、なんとも面倒なものを観てしまったという感じでした。

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笑えるところはそんなにないのですが、バイオレットが、食卓の席の男たちをたしなめるところは笑ってしまった。夏のオクラホマ州は40度を超えることがあるらしいのですが、この家にはエアコンはない。男たちはジャケットを脱いでいるが、喪中の食事ということでバイオレットがジャケットを着るよう注意する。この様子が、極妻シリーズの岩下志麻を彷彿とさせました。男たち全員がすごすごとジャケットを羽織るという。40度超えているのにー。恐ろしいおばちゃんである。暴君のようなメリル・ストリープと、それに立ち向かうジュリア・ロバーツすばらしかったですね。

鑑賞後、夏目漱石の「道草」の一節を思い出しました。
「離れればいくら親しくってもそれきりになる代わりに、一緒にいさえすれば、たとえ敵同士でもどうにかこうにかなるものだ。つまりそれが人間なんだろう」

家族というのは大変だ。


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