02
2016

クラッシュ

crash /2004年 / ドイツ、アメリカ / 監督:ポール・ハギス / ドラマ
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善人も悪人も存在しない。
【あらすじ】
ロサンゼルスで起こった一つの交通事故から、多民族国家アメリカが抱える問題点を描く。人種、宗教、経済格差、銃、暴力、問題山積みですが、しかし君らケンカばっかしておるね。ケンカしかしてないね。


【感想】
最近、ポール・ハギス監督が撮った「サード・パーソン」を鑑賞しました。「サード・パーソン」が面白かったので同監督の「クラッシュ」も観てみようと。

特に主人公がいるわけでもなく、一つの事故をきっかけにアメリカが抱えるさまざまな問題を描写する群像劇になっている。「サード・パーソン」もそうでしたがポール・ハギス監督は群像劇が得意ですね。

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しかし、不機嫌なお顔のサンドラ・ブロック。これは三人ぐらい殺している人の顔。ヒステリックに当たり散らします。まあ、迷惑な人だよ。映画は、人種問題についても描かれていますが、善意悪意の連鎖についても描かれている。差別的発言をされ、不愉快になった人物が他人に八つ当たりし、その人がまた八つ当たりし、悪意の雪玉は坂道を転げるようにどんどん巨大になっていく。ほんの小さな悪意がやがて巨大な悪意の塊となって発現し、人が死ぬような事態を引き起こしてしまう。

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この映画は、人を善人悪人で分けていない。その点がすばらしい。善悪というのは固定されたものではなく、瞬間的な状態を指すのではないか。たとえば、ロス市警のライアン巡査(マット・ディロン、右)は黒人に対して差別感情を持っている。それを隠そうともしない。機嫌が悪いときは黒人の車をとめ、ボディチェックと称して黒人女性の体をまさぐったりする。ここだけ見れば最低な人間だし、それは間違いない。だが、家では献身的に父親の介護をし、職務中、命がけで黒人を救うこともあるのだ。どちらが本当の彼かというと、どちらも本当の彼だ。

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一方、差別を憎む警官もいる。ライアン巡査の相棒のハンセン巡査(ライアン・フィリップ)。人種差別をするライアンに対して疑問を抱き、ライアンとのコンビを解消する。ハンセンはこの映画では善人に見える。だが、ふとした誤解と、心の奥底にあった偏見から黒人を射殺してしまう。悪を行っていたからといって必ず報いを受けるものでもなく、善を行っていた者が結果として悪を行ってしまうこともある。

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黒人の鍵屋と、その娘の「魔法のマント」のエピソードがありますが、これはいい話でしたね。

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悪意が連鎖するなら、善意も連鎖するかもしれない。その可能性を感じさせたのがアンソニー(リュダクリス、右)のエピソード。白人を憎み、犯罪ばかり行っていたアンソニーが移民を助けるという変化を見せる。善悪は固定されたものではなく、容易に変えられる一時的状態であるならば、わたしたちはいい方向に変わることもできる。たとえ今までは悪人と言われていた人間でも。それが希望というものではないか。などと思いはするものの、ちょっとね、きれいすぎるというか、説教くさいというか、教科書的すぎるというか。本当に出来はいいんです。これほど出来がいい作品をつかまえて、そんな因縁をつけるのもひどいけど。安心して観られすぎたように思う。監督が持っている善性みたいなのが吹き出して見えた。「あ、この人はきっとひどいことはしないな」という。

本当に贅沢なこと書いてるなあ。もっとね、三十人ぐらい悲惨な死に方をすればなあ。無茶なことを書くなという。いい映画ですよ。


2016年2月22日~2016年3月21日まで、GYAO!で無料配信しています。
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