12
2016

少女は自転車にのって

WADJDA / 2012年 / サウジアラビア、ドイツ、アメリカ、アラブ首長国連邦、ヨルダン、オランダ / 監督:ハイファ・アル=マンスール / ドラマ
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自転車に自由に乗れない世界がある。
【あらすじ】
自転車が欲しいのでお金を貯めて買うことにしました。金を稼ぐぞー。


【感想】
珍しいサウジアラビア映画です。それもそのはず、サウジアラビアには映画館が一軒もなく、2012年に作られた映画はこの一本だけとのこと。ちなみにレンタルDVD店に女性が入ることも禁じられているそうです。イスラム教の戒律の厳しさの中で、女性監督がこの映画を撮ったということがすごい。「この映画を国内で公開すべきかどうかの是非が新聞の一面にとりあげられた」(公式サイト)という逸話が、サウジアラビアの女性差別の深刻さを表しているように思える。

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ワジダ(ワアド・ムハンマド)は、おてんばな10歳の少女。イスラムの伝統的な慣習は好きになれず、隠れてロックミュージックを聴き、コンバースのスニーカーやジーンズを身に着けることを好む。女の子が自転車に乗るなどとても許されないが、なんとかして自転車を手に入れてやろうとたくらむ。「自転車に乗りたい」というささやかな夢のために、一直線に突っ走るワジダが実にしたたかでいい。

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監督のインタビューを読むと「決して政治的な行動をしたかったわけではなく、私は物語をつむぎたかっただけなのです」(映画.com)などと語っている。わはは。監督自身がワジダなんですよね。自転車を買う金欲しさに、コーランの暗誦コンクールに出るような。それぐらいのしたたかさがないと、サウジアラビアで女性が映画を撮るなんてできないのだろう。

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戒律の厳しさに驚かされる。女は、家族以外の男に顔や肌を見せてはいけないというのは有名ですが、笑い声すら駄目なんですね。男がいると、女たちは隠れてしまう。でも、家の中ではかなり派手な服を着ている。夫以外に見せられないとは、なんだかつまらん気もするけど。

この厳しさは異様だ。女の顔どころか声まで家族以外の男に隠すということは、この戒律を定めた人間は女の顔や声を聴いただけで性欲が抑えられなくなると告白しているようなものだけど。そんなことないのかな。

 ワジダの家には家系図を描いたものがある。家系図に名前が載るのは男だけで女は載らないんですね。女は、人というより財産の一つという考え方なのだろうか。

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ワジダと似た年齢の子が、親の探した相手との結婚を決められている。サウジアラビアは一夫多妻制で、男は四人の妻と同時に婚姻することができる。これはサウジに引っ越すしかない。

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とまあ、日本に住んでいる身からすると、とんでもない状況に見える。ただ、問題は女の側にもあるように見える。ワジダが通う学校の校長は、女でありながらこの戒律に反対するわけでもなく、むしろ厳しく守ろうとする。ワジダの母も、夫が他の妻のところに行ってしまうことに不満を抱きながら、ワジダには戒律を守らせようとする。なんだろう、これは。

部活のF井先輩を思い出した。「俺たちの代は苦労してきた。でも、これは伝統だから、おまえらも苦しめ」という無茶苦茶な理屈。自分の代が苦労したなら、下には同じ想いはさせないという発想はないのだった。F井先輩に対する恨みは置いとこ。

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ワジダと近所の少年の交流が良かったですね。彼は、ワジダを将来お嫁さんにするという。婚姻が自分の意思とは関係ないところで決まってしまうことを、ワジダはもう知っている。でも、少年のいうことを否定するでもなく、はにかんだ表情がかわいらしかった。

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かなりひどい人権状況にありながら、それを激しく糾弾するという形ではなく、柔らかく現実を伝えようとする監督の姿勢に好感が持てます。こういう戦い方もあるのだと教えられた気がした。2015年には、サウジもようやく女性に地方選挙への参政権が認められるそうで、そうなればこの状況も少しずつ変わっていくのかもしれません。アメリカでシェールガスの掘削技術が向上したことも追い風になりそうである。今までアメリカは原油輸入の必要性からサウジを批難できなかった。それが自国でシェールガスを供給できることにより、サウジから離れ、サウジと対立するイランと親交を深めている。

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最後は希望を持てる終わり方になっているのもとても良かった。一番の壁と思われていた人が味方になってくれたのも意外だった。ワジダの願いが叶ったように、女性が自由に自転車に乗れる日が早く訪れてほしいものです。


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