03
2016

おみおくりの作法

Still Life / 2013年 / イギリス、イタリア / 監督:ウベルト・パゾリーニ / ドラマ
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葬儀は誰のためのものか。
【あらすじ】
身寄りがない人の葬式をする。



【感想】
邦題「おみおくりの作法」は、邦画「おくりびと」を想起させる。原題は「Still Life」で「静物画」の意味。原題はすべて大文字というのが多いですが「Still Life」は小文字が使われている。主人公の性格が控え目なことと関連があるのかな。強く主張しないという。

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ロンドン市ケニントン地区の民生係、ジョン・メイ(エディ・マーサン)。ひとりきりで亡くなった人を弔うのが仕事。故人の持ち物を丹念に調べ、宗教に合わせた葬儀を行い、故人が好む音楽を調べて流したりもする。実に丁寧な仕事をしていて好感が持てる。だがですよ、なにか違和感のようなものも感じたのだ。この映画は、死後の世界や霊魂の存在を信じるかどうか、死者への敬意の払い方によって感想が異なりそう。

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ジョンは死者の遺品を整理する際、故人の写真などを無断で自宅に持ち帰る。それをアルバムに貼って眺めている。これは死者への弔いであり、あなたのことを忘れていませんよというジョンの優しさなのかもしれない。だが、ちょっと気持ち悪いと思ったのも本当だ。コレクターのようなね‥‥。

丁寧かつ不気味な仕事ぶりのジョンだったが、上司から「お金と時間をかけすぎる」という理由で解雇を言い渡されてしまう。たしかに独りよがりの仕事かもしれない。ジョンは最後の葬儀に向けて、より一層熱心に仕事に取り組みだす。故人の知り合いを訪ねまわり、葬儀に参加してくれるよう頼みこむ。偉い人なのか、ちょっとアレな人なのか、難しいところ。

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やっと見つけた彼の娘にほのかに恋心を抱くジョン。彼の服装が柔らかく変わったことで心境の変化が表されている。故人の人生をたどることで、誰とも関わってこなかったジョンが、ようやっと死者ではなく生者と向き合おうとする。だが、恋愛で浮かれてしまったのか、ジョンは交通事故で亡くなってしまう。今までは車がまったく来ないときでも信号を守っていたのに、通りに飛び出しで死んでしまうのだ。

あれほど丁寧な葬儀にこだわっていたジョンだが、皮肉なことに彼自身の葬儀には誰一人やってこない。ジョンは孤独だった。だからこそ、ジョンは身寄りのない死者を家族のように大切に扱っていたのかもしれない。だが、死後に彼の墓の周りには、彼が葬儀をとりおこなった死者たちが集まってくる。彼の丁寧な仕事に感謝している者たちはいたのだ。

これは本当に死生観によって見方が変わってきますねえ。わたしは今のところ、死後に自分の体がどう扱われようと興味がない。畑に撒かれてこやしになってもいいし、腹話術の人形代わりにして遊んでもらってもいい、頭をサッカーボール代わりにされてドリブルされてもいい。え、そこまで。

でも認識できないだろうから、いいも悪いもないというのが正直なところなのです。ただ、ジョンの丁寧な仕事ぶりは嬉しい。やはり責任ある仕事というのは、観ていて気持ちがいいのだ。たとえ、わたしとは信条が違うとしても。この作品は死者を大切に扱ってほしい人には感動的に映るのだと思います。


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