05
2016
2
ぼくの伯父さん
mon oncle / 1958年 / フランス / 監督:ジャック・タチ / コメディ

伯父さんが変なのか、周りの大人が変なのか‥‥。両方、変だと思います。
【あらすじ】
フラフラしている伯父さんをなんとかしたい。
【感想】
1958年公開ということで、もう今から60年余り昔の作品です。どこか懐かしさはあるものの、古さはそんなに感じない。白黒からカラーになったばかりの頃だと思うのですが、色使いが美しいですね。
ジェラール(アラン・ベクール、左)の父はゴムホース工場の社長、母は専業主婦。郊外の豪華な住宅で何不自由なく暮らしているが、ジェラールは贅沢な生活よりも下町が肌に合っている。父の義理の兄であるユロ伯父さん(ジャック・タチ、右)が大好きで、しばしば下町の伯父さんの家を訪れる。ジェラールの両親はフラフラしている兄をなんとかして働かせ、結婚させようとする。そんなことまったく気にしない伯父さんなのだった。

ユロ伯父さんの飄々とした雰囲気がいい。身なりは垢抜けないし、おまけに無職。無口でなにを考えているかわからない。ちょっととぼけた感じがあって、でもみんなに好かれている。

ドリフほど激しくないドタバタ劇というのでしょうか。ボケたらボケっぱなしで、今のお笑いのように誰かが突っ込むこともない。笑いにも、どこか穏やかさがある。来客があるときだけ水を出す噴水とか、庭の敷石を踏み外さないようにみんなが歩いたり。とにかく雰囲気がゆったりしている。今の刺激に満ちたお笑いに慣れてしまったのか、なんだか不思議な気がしました。大笑いするようなことはないんですよね。なんだろう、しみじみ眺めてしまうというか。

少年ジェラールが暮らす自動化された家(上)と、ユロ伯父さんが暮らすシンプルな家(下)のわかりやすい対比。

最新の技術が詰まった家に振り回される滑稽さ、隣人を気にして見栄を張る富裕層の生活と、お金はないけどみんなに好かれる伯父さんの生活を対比させている。風刺なのかもしれませんが、それほど強い感じはない。どちらの家も魅力的に見えますね。両方、変な家だけど。魚の噴水のかわいくなさなんて最高である。

ジェラールは伯父さんが大好きで、その様子が微笑ましい。子供にとっては、伯父さんが無職であることや、垢抜けないかっこうをしていることなんて全然関係ない。面白いお土産を持ってきてくれたり、いたずらを優しく見守ってくれたり、ときには一緒にやったり、それで十分なんですね。

ジェラールの家の隣に住むおばさん(右)。藁をかぶっているように見えるんだけども‥‥。なんだこれ、お洒落なのか‥‥。独特のファッションですね。前世、何か悪事を働いた罰としてこの帽子をかぶっているのでしょうか。富裕層の考えることはわからん。

下町の活気に溢れた様子も良かったですね。群れをなす野良犬や、いたずらに励む子供。もっとも気になったのは、子供相手の揚げパンの屋台。揚げパンを作っているおじさんが、まあ汚いんですよ。パンを揚げた手を服の胸の部分でぬぐうもんだから、胸のところが油で真っ黒。お金を受け取るのも、パンを渡すのも同じ手。うへぇ! と思うものの砂糖を山盛りにした揚げパンが美味しそう。子供たちはまったく気にせずに揚げパンを美味そうにほおばる。

ユロ伯父さんのアパートの一階に住む娘も良かった。お転婆で、伯父さんになついており、伯父さんは挨拶代わりに彼女の鼻の頭をチョコんと押していた。伯父さんが引っ越すとき、彼女はおめかししてちょっと大人になった様子を見せる。伯父さんが、鼻の頭を押すのをためらう様子がいい。シャイなのかもしれないし、彼女を大人の女性と認めたのかもしれない。全体として派手さはまったくなくて、ちょっとおかしかったり、ちょっと愛らしかったり、でもその加減がいいのです。のんびりしたいときにピッタリな、すてきな映画でした。
街並みや住宅のデザインもいいですが、音もいいですね。どこかで聞いたことのある音楽もそうだし、ハイヒールでコツコツ歩く音も愉快な気分になります。


伯父さんが変なのか、周りの大人が変なのか‥‥。両方、変だと思います。
【あらすじ】
フラフラしている伯父さんをなんとかしたい。
【感想】
1958年公開ということで、もう今から60年余り昔の作品です。どこか懐かしさはあるものの、古さはそんなに感じない。白黒からカラーになったばかりの頃だと思うのですが、色使いが美しいですね。
ジェラール(アラン・ベクール、左)の父はゴムホース工場の社長、母は専業主婦。郊外の豪華な住宅で何不自由なく暮らしているが、ジェラールは贅沢な生活よりも下町が肌に合っている。父の義理の兄であるユロ伯父さん(ジャック・タチ、右)が大好きで、しばしば下町の伯父さんの家を訪れる。ジェラールの両親はフラフラしている兄をなんとかして働かせ、結婚させようとする。そんなことまったく気にしない伯父さんなのだった。

ユロ伯父さんの飄々とした雰囲気がいい。身なりは垢抜けないし、おまけに無職。無口でなにを考えているかわからない。ちょっととぼけた感じがあって、でもみんなに好かれている。

ドリフほど激しくないドタバタ劇というのでしょうか。ボケたらボケっぱなしで、今のお笑いのように誰かが突っ込むこともない。笑いにも、どこか穏やかさがある。来客があるときだけ水を出す噴水とか、庭の敷石を踏み外さないようにみんなが歩いたり。とにかく雰囲気がゆったりしている。今の刺激に満ちたお笑いに慣れてしまったのか、なんだか不思議な気がしました。大笑いするようなことはないんですよね。なんだろう、しみじみ眺めてしまうというか。

少年ジェラールが暮らす自動化された家(上)と、ユロ伯父さんが暮らすシンプルな家(下)のわかりやすい対比。

最新の技術が詰まった家に振り回される滑稽さ、隣人を気にして見栄を張る富裕層の生活と、お金はないけどみんなに好かれる伯父さんの生活を対比させている。風刺なのかもしれませんが、それほど強い感じはない。どちらの家も魅力的に見えますね。両方、変な家だけど。魚の噴水のかわいくなさなんて最高である。

ジェラールは伯父さんが大好きで、その様子が微笑ましい。子供にとっては、伯父さんが無職であることや、垢抜けないかっこうをしていることなんて全然関係ない。面白いお土産を持ってきてくれたり、いたずらを優しく見守ってくれたり、ときには一緒にやったり、それで十分なんですね。

ジェラールの家の隣に住むおばさん(右)。藁をかぶっているように見えるんだけども‥‥。なんだこれ、お洒落なのか‥‥。独特のファッションですね。前世、何か悪事を働いた罰としてこの帽子をかぶっているのでしょうか。富裕層の考えることはわからん。

下町の活気に溢れた様子も良かったですね。群れをなす野良犬や、いたずらに励む子供。もっとも気になったのは、子供相手の揚げパンの屋台。揚げパンを作っているおじさんが、まあ汚いんですよ。パンを揚げた手を服の胸の部分でぬぐうもんだから、胸のところが油で真っ黒。お金を受け取るのも、パンを渡すのも同じ手。うへぇ! と思うものの砂糖を山盛りにした揚げパンが美味しそう。子供たちはまったく気にせずに揚げパンを美味そうにほおばる。

ユロ伯父さんのアパートの一階に住む娘も良かった。お転婆で、伯父さんになついており、伯父さんは挨拶代わりに彼女の鼻の頭をチョコんと押していた。伯父さんが引っ越すとき、彼女はおめかししてちょっと大人になった様子を見せる。伯父さんが、鼻の頭を押すのをためらう様子がいい。シャイなのかもしれないし、彼女を大人の女性と認めたのかもしれない。全体として派手さはまったくなくて、ちょっとおかしかったり、ちょっと愛らしかったり、でもその加減がいいのです。のんびりしたいときにピッタリな、すてきな映画でした。
街並みや住宅のデザインもいいですが、音もいいですね。どこかで聞いたことのある音楽もそうだし、ハイヒールでコツコツ歩く音も愉快な気分になります。
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