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2016

海街diary

2015年 / 日本 / 監督:是枝裕和 / ドラマ
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完璧な四姉妹と鎌倉の美しさ。
【あらすじ】
鎌倉の三姉妹のもとに腹違いの妹がやってきた。



【感想】
原作は吉田秋生の同名の漫画。原作未読。邦画には、漫画を実写化すると壮絶にこけるという呪いがあるが、その呪いから脱した珍しい作品。たいへん美しい映画でした。

是枝監督の映画は家族関係を扱ったものが多いですね。しっかり者の長女・幸(綾瀬はるか、左)、自由奔放でちょっとだらしないところのある次女・佳乃(長澤まさみ、右から2)、のんびり屋で変わり者の三女・千佳(夏帆、右)は、三人で共同生活をおくっている。父は十五年前に家族を捨て不倫相手の元へ、母(大竹しのぶ)も再婚して家を出ている。父の葬儀に出席した際、幸たちは腹違いの妹であるすず(広瀬すず、左から2)と出会う。父が死に、血縁のある身寄りがいなくなったすずを気の毒に思った幸は、鎌倉で自分たちと一緒に暮らさないかと提案する。中学生だったすずは、鎌倉に来ることを決意した。

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登場人物たちが持っている空気がとても穏やかなんですよね。鎌倉の良さでしょうか。東京ほど切羽詰まってないような感じがして。海があるというのも大きい。

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姉が妹にペディキュアを塗ったり、家の柱に身長を記録したり、庭で採れた梅で梅酒を作ったりと、うらやましい生活を送っています。彼女たちが暮らす日本家屋もすてきですね。

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鎌倉の海で4人が遊ぶ場面があるのだけど、あまりに完璧に幸せな場面で、もうこれ以上の幸せなどなくて、あとは落ちていくしかないだろうと怖くなったりもした。4人はその幸せに無自覚で、今がどれぐらいすてきな時間なのか気づいていない。何年後かに振り返ったとき「あのときはとてもすばらしい瞬間だった」と愕然とするような完璧な時間なのだ。わたしは完璧に幸せな人を見ると具合が悪くなることがあるので、この場面はつらかった。病気かしら。

是枝監督の作品で不思議なことが二点あって、一つは悪人が出てこないところ。本当に嫌な人がいないんですよね。三姉妹は、自分たちから父親を奪った仇の娘であるすずを迎え入れるが、誰も嫌がらせなどはしない。温かく迎えて、実の妹のように接する。すずも、真面目できちんとしている。育った環境を考えると屈折しても当たり前に感じるけど、歪んだところがない。全員が大人なんですね。

すずが転入した学校のクラスメートたちも温かい。中学のときの男など屈折しまくりですからね。女子と話すだけで、ちょっといろいろあるじゃないですか。ないの? 最近そういうのないの? なのに、成熟した大人のような接し方というか、君ら全員四十を超えてないか。不惑ですよ。

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すずは内心では、自分が存在するだけで三姉妹を傷つけているのではないかと不安になっている。本当にここにいてよいのか、密かに悩んでいる。同級生の男子は、そんなすずを慰めようと自分の話をするんですね。彼は三人兄弟の末っ子で、両親は「次こそは女の子」と思っていたのに、また男でがっかりしたという。彼の話は、すずの悩みに比べるとあまりに軽い。ちょっとずれているものの、彼の精一杯の優しさはとても微笑ましい。

善人ばかりの物語なんですよね。亡くなった父親も、だらしのない人だったかもしれないが悪人ということもない。

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もう一つの不思議な点ですが、是枝監督の映画は性の匂いがしない。冒頭、次女・佳乃の朝帰りから映画は始まる。ベッドに男と並んで寝ていても、まったくいやらしくない。朝までゲームをやっていたと言われれば「そうなのかも‥‥」と信じてしまいそうな。長女・幸と同じ職場に勤める医者(堤真一、左)は幸と不倫関係にあるが、それもなぜかいやらしさがない。まったく生々しくない。性の匂いを感じさせないことで、映画に透明感のようなものを与えているのだろうか。

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鎌倉の景色は美しく、人々も親切で優しい。どこまでも完璧な世界に見える。他の作品もそうですが監督の善性を強く感じさせる。

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病気、死、自分の存在、仕事、それぞれに悩みはあるがみな淡々としている。情念や怨恨などとは無縁で透き通っている。是枝監督は美しいものを美しく撮れる。この透明感のようなものを良しとするかどうかで、この映画を好きになるか決まるのではないでしょうか。登場人物の佇まいが良く、すてきな映画だと思います。わたしにはまだ少し眩しすぎる。

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