04
2016

ファーナス/訣別の朝

OUT OF THE FURNACE / 2013年 / アメリカ / 監督:スコット・クーパー / サスペンス、社会問題
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国が俺たちを見捨てるなら、あたしゃ好き勝手やらせてもらいます。
【あらすじ】
弟の復讐をがんばりたい。



【感想】
原題「OUT OF THE FURNACE」の「FURNACE」は「溶鉱炉」という意味。物語の舞台となるペンシルベニア州の主要産業が鉄鋼業なんですね。アメリカ最大の鉄鋼業USスチールもペンシルベニア州にある。主人公であるラッセル、ラッセルの父もペンシルベニアの田舎町ブラドックの製鉄所で働いてきた。「溶鉱炉」というのは彼らの暮らしそのものだった。しかし、グローバル化により業績は悪化。ラッセルの勤める製鉄所も中国からの安い製品に勝てず廃業を決めてしまう。タイトルは、ごく平凡な暮らしすら捨てざるを得なくなった人々の状況を表しているのかな。

先日観た「パワー・ゲーム」もそうでしたが、社会問題をテーマにしたものが増えてきているように思える。この映画は弟を殺された兄の復讐劇ですが、復讐そのものよりも押しつぶされる弱者、貧困層に焦点を当てている。

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ペンシルベニアの田舎町ブラドック。ラッセル(クリスチャン・ベイル、左)はこの町で生まれ、年老いた父親の面倒を見ながら製鉄所で働いている。弟ロドニー(ケイシー・アフレック、右)は軍に入りイラクへ派遣された。帰国はしたが、戦争で心に傷を負い社会にうまくなじめない。ギャンブルに明け暮れ、ぶらぶらしている。

大学の学費のためや市民権獲得のために軍に入るというのは映画でよく見かける場面ですね。貧困層や移民にとって、これは事実上の徴兵制と言えるのかもしれない。

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ロドニーはギャンブルで負った借金を返すため違法な賭け試合に出るようになる。ロドニーは国のために命をかけて戦ったはずだった。それなのに国は何もしてくれない。生活は悪くなり精神は蝕まれる。ロドニーが危険を冒して戦い続けるのは国への怒りのように映る。

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やがてロドニーは、胴元であるデグロート(ウディ・ハレルソン)に目をつけられ殺されてしまう。なぜロドニーがデグロートに殺されたのかはちょっとよくわからないんですよね。デグロートが要求する八百長も無難にこなしたわけだし。ロドニーの知り合いであるジョン・ペティが借金を帳消しにしろと言ったのが気に入らなかったのかな。デグロートはとにかく無茶苦茶な人なのだ。ウディ・ハレルソンて、悪役ばっかりだなあ。ひどい人に定評があります。今回もひどかった。

警察はデグロートの逮捕に後ろ向きなんですね。デグロートのいる場所は無法地帯で警察もあまり機能してない。頭に来た兄ラッセルは、警官のバーンズ(フォレスト・ウィテカー)に詰め寄るが、デグロートを逮捕するという言質はとれない。

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ラッセルにしてみれば、弟は殺され、警察は仕事しない、恋人はバーンズにとられちゃう、職場は廃業するで踏んだり蹴ったりなのでした。それでもかろうじて踏みとどまっている。

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自分を捨てた恋人をいっさい責めないラッセル。原因の一端は自分にあるとはいえ、普通は文句の一つも言いたくなる。恋人がバーンズの子を妊娠し、それを喜んでやるという。仏様かな?

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みずからが囮になってデグロートのアジトを突き止め警察に通報するも、警察が踏み込んだときはデグロートは逃亡していた。もう警察は役に立たん! ラッセルは猟銃を取り出し、みずからデグロートを殺す決意を固める。さっきまで仏だったのにー。

対決の舞台となった場所は製鉄所跡に見える。経営破綻したペンシルベニアの鉄鋼会社ベスレヘム・スチールがモデルなのかもしれません。荒廃した跡地とラッセルの心の荒み具合が重なって見える。

ラッセルを止めようと警官のバーンズが追いかけてくる。デグロートを撃とうとするラッセルをバーンズは思いとどまらせようとする。バーンズはラッセルに銃を置くよう警告するが、ラッセルは聞かない。ラッセルはデグロートを撃ってしまう。このとき、十分な時間があったにもかかわらずバーンズはラッセルを撃たなかった。なぜなのだろう。

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バーンズはバーンズなりの葛藤があったのではないか。ロドニーは国のために命を懸けたのに国は報いなかった。ラッセルも真面目に仕事に取り組んできたのに職を失ってしまった。警察は、麻薬や殺人に手を染めるデグロートを放置してきた。バーンズは警官であり国側の人間である。今まで何もしてこなかった国が、こんなときだけラッセルを止めてよいのだろうか。イラク戦争、経済格差、貧困、グローバル化による製造業への圧迫、麻薬、それらが絡み合ってロドニーとラッセルを痛めつけた。バーンズがラッセルの復讐を止めなかったのは、バーンズなりの国への抗議なのかもしれない。

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