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2016

アダプテーション

Adaptation. / 2002年 / アメリカ / 監督:スパイク・ジョーンズ / コメディ
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チャーリー・カウフマンてどんな人? 面倒くさい人に違いない。
【あらすじ】
脚本が書けません。助けて。



【感想】
映画「マルコヴィッチの穴」で成功を収めた脚本家チャーリー・カウフマン(ニコラス・ケイジ)。次回作はスーザン・オーリアンのノンフィクション「蘭に魅せられた男」の脚本化だった。だが、遅々として作業は進まない。焦るチャーリー。その間に双子のドナルドは順調に脚本家デビューを果たす。キーッ! あいつの安易な脚本が評価されるなんて許せない! おまけに女にモテるし!

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現実と虚構が絡み合ったややこしい構成になっている。チャーリー・カウフマンは実在の脚本家であり、この「アダプテーション」の脚本も担当している。「蘭に魅せられた男」というノンフィクションも、実在する作家スーザン・オーリアンによって本当に書かれている。


しかし、チャーリー・カウフマンは思い切りましたねえ。自分を主人公にして脚本を書いてしまうのだから。自分大好きなのかな。

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チャーリー・カウフマンはちょっと面倒な人に思える。他人が自分をどう見ているか常に考えている。みずからを「ハゲ、デブ、ダサい」と卑下し、才能の無さに悩んでいる。なんかこうちょっと共感してしまいますよ。生きづらい性格ですよ、これは。

出会った女性との性行為を夢想する癖があるが、実際は奥手でうまく誘えない。双子のドナルド(架空の人物、ニコラス・ケイジの一人二役)はチャーリーと正反対。彼と同じ容姿ながら女性にモテ、明るくて冗談をよく言い、パーティーでも人気者。みずからの憧れを投影したキャラに見える。そんなドナルドに憧れつつ苛立ちも感じる。

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チャーリーは作品に対してどうしても譲れないところがあって、作家性のあるものを書きたがる。安易に、銃、ドラッグ、カーチェイスを出す作品を嫌っている。一方、ドナルドといえば人気作品を適当に混ぜたシナリオがプロデューサーに高く評価され、デビューが決まる。チャーリーは面白くない。

チャーリー・カウフマンの描く主人公は根暗でどこか欝々とした人が多い。作り上げたキャラクターへの自己投影がきわめて強い脚本家なのかもしれない。ただ、丸っきり自分が投影されているかというとそうでもない。自分を演じたニコラス・ケイジに、自分のことを「ハゲ、デブ」などと言わせている。ところが実際のチャーリー・カウフマンの画像をみるとハゲでもデブでもないのだ。自己を投影しているかにみせて、実はニコラス・ケイジを使ってふざけているという。ニコラス・ケイジの悪口じゃんかあ!

銃、ドラッグ、カーチェイスの作品なんて嫌いだと言ってるわりに、映画の終盤はこの3つが全部出てくるという、なんとも屈折した笑い。どこまで本気かわからない。でも、ただふざけているんじゃなくて、創作で苦しんでいるのは本当に思える。そして、派手なだけで真理や主張を含まない作家性の低い作品が嫌いなのも本当なのだろう。

劇中のチャーリー・カウフマンは青臭いことを純粋に悩んでいて微笑ましい。中学生のようなのだ。その葛藤を笑いに変えられるということは、本当のチャーリー・カウフマンは心の底に純粋さを隠し持ちながらも、現実とうまく折り合いをつける能力を持っているのだろう。

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この映画の原題「Adaptation.」には「脚色」と「適応」の二つの意味が与えられている。二つの異なるものがテーマの一つなのかもしれない。双子のチャーリーとドナルド。「蘭に魅せられた男」を書いたスーザン・オーリアン(メリル・ストリープ)も二面性を持っている。

しかし、スーザン・オーリアンは実在の人物ながら、劇中では不倫したり人殺しをしようとしたり、けっこう滅茶苦茶に描かれてますね。やりたい放題なのだった。怒られないのかな。

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ハチと蘭の話が印象的だった。ハチに擬態した蘭があって、ハチはだまされて蘭と交尾しようとする。もちろん交尾はできない。だが、ハチには蘭の花粉が付く。花粉をつけたハチは、間違えてまた別の蘭にとまる。そうやって蘭は受粉することができる。ハチも蘭も、お互いが何も知らないのに見事に自然を繁栄させていく。わたしは無意識に、わたしの知らない大事な何かを知っている。そういうこともあるのかもしれない。

ちょっと変わったコメディを観たい人にはいいかもしれません。脚本担当がチャーリー・カウフマン、ドナルド・カウフマンとなっていて、架空のドナルドをスタッフに加えているところも遊び心があっていいですね。


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