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2016

麦子さんと

2013年 / 日本 / 監督:吉田恵輔 / ドラマ、コメディ
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わたしの母になる前に、母には母の人生が。
【あらすじ】
母が亡くなったので納骨しに故郷を訪れる。


【感想】
堀北真希の代表作といえば「予言」かと思っておりました。違った。この「麦子さんと」は代表作になる一本に思える。親子関係に問題がある人が観れば、その人にとって特別な映画になるかもしれません。

そして、女優として一番美しい時期の堀北真希さんを捉えることに成功している。きれいでした。

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麦子(堀北真希)は声優をめざすアニメ好きの女の子。パチンコ屋に勤める兄(松田龍平)と二人暮らし。バイトをしながら声優専門学校に入るための学費を貯めている。兄がまあなんと言うか、ほどよくクズですね。本当のクズではなく、軽いクズ、軽クズと言えましょう。別居していた母から毎月生活費の仕送りがあったのだが、それを妹に隠し「自分が妹の生活の面倒をみてやってる」と恩を売っていた。すぐばれたけど。

松田龍平さんはちょっと悪い役が似合うなあ。本当にこういうロクでもない嘘をつきそうに見える。すばらしいクズ感。

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貧しいながらなんとかやっていた二人のところに、突如、母の彩子(余貴美子、右)が訪ねてくる。父と離婚し家を出た彩子。彩子と二人は長い間、会っておらず、二人は彩子に捨てられたと思っていた。二人は、彩子と暮らすことには反対だったが、生活費の都合から三人で共同生活をすることに。

突然、家族が増えて戸惑う麦子。彩子とどう接してよいかわからず、ためらう様子が良かった。親子で一緒にアニメを観ている場面なのだけど、この変な空気はよくわかる。自分の好きな物を親と観ているとき「こういうのがいいの?」と訊かれ「いや、べつに」と言葉を濁してしまう気恥ずかしさ。なんでしょうね、あの感じ。

アニメを観ている麦子に「この子は‥‥魔法使いなの?」「今魔法みたいなの使ったけど、やっぱり魔法使いじゃないの?」と絡んでくる彩子の鬱陶しさ。彩子は麦子との距離を縮めたいのかもしれないけど、これは恥ずかしいわー。頼むからほっといてくれという。

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堀北真希さんがアニメ好きで、ノリノリで声優の真似をしているところはおかしかった。右側はバイト仲間役の田代さやかさん。伊集院光さんのDVDなどで見かけますね。

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母と一緒に暮らしだした矢先、母はあっさりと他界してしまう。

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今一つ母の死の実感もないまま、麦子は母の遺骨を抱え、納骨のために母の故郷を訪れた。

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当たり前のことですが、母は、自分を産む前は母ではなくて一人の女性なんですね。田舎にいた頃の彩子は村ではアイドル扱いされていて、東京に出て歌手になるという夢があった。わたしが産まれる前の両親、親になる前の二人はどんな人生だったろう。この映画の彩子のように夢を持っていたのかもしれない。夢破れた彩子はラブホテルで清掃の仕事をしている。長い間、子供たちにも会えず、彼女を支えたものはなんだったのだろうか。

母に対してわだかまりがあった麦子だが、村人たちに母の話を聞くうちにしだいに母を受け入れていく。温水洋一さんが、居酒屋で麦子をたしなめる場面は毅然としてすてきでした。ストーカー扱いしてごめん。

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田舎での麦子の面倒をみてくれた役所の女性(麻生祐未、右)。温水、麻生という脇を固めた二人がとても良かったですね。温水はボーリングがプロ並みにうまく、麻生はBL好きという隠れた趣味を持っている。ここらへんも「子供が知らない親の一面」を表しているように思えました。

とても良かったのですが、やや泣かせに走りすぎているような印象も。旅館のバカ息子と麦子をだぶらせるのもちょっとストレートすぎるように感じた。田舎の人々が彩子をアイドル扱いし、みんな麦子に興味を持ちすぎるのもなんだか変なような。いろいろ文句をつけるものの、それでも泣く。

どうも親子物に弱いんですよね。親に迷惑を掛けてきたとか、負い目があるという人には尚更堪える作品になっています。そもそも、どこにも理想的な家族なんかいなくて、誰しも大なり小なり傷を持っているはず。それはどんな幸せな家族でもそうだと思う。だから普遍的で誰の心にも響く作品なのではないでしょうか。

子は親の気持ちがわからなくて、わかった頃には親はいない。親からの恩など返しきれるわけもなくて、だから下の世代に恩を送っていくことしかできないのだろう。わたしの場合、親からの恩はわたしの代で絶えるわけですが。下の世代が誕生しなさそうだし。おおおおお。なにか絶望感がやってまいりました。

自分が送ってきた人生、親子関係によって、だいぶ評価が異なる映画なのだと思います。好きな人はすごく好きになるんじゃないかな。スタッフロールを最後まで観ることをお勧めします。好きな映画でした。



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