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2016

リュウグウノツカイ

2014年 / 日本 / 監督:ウエダアツシ / ドラマ
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男なんかいらん! 子供を産んで私たちの国をつくるのだー! なんで?
【あらすじ】
男が頼りないので、子供を産んで女だけで暮らしたい。


【感想】
異様な設定の青春もの。アメリカで実際に起きた女子高生集団妊娠騒動から着想した作品ということですが、アメリカの事件に深く影響を受けたということではなさそう。あくまで女子高生の集団妊娠という設定を借りただけなのかな。

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開発工事の影響で、海が汚れて魚が獲れなくなった漁村。開発工事反対の看板がそこかしこに立ち並ぶ。漁師たちは漁に出ることができず仕事を失っていった。村は崩壊しつつある。家族がバラバラになる者や、生活のために船を売る者、一日飲んだくれている者など、村人の生活も荒み始めた。開発工事に携わる者は、漁で生計を立てる者たちから嫌がらせを受けていた。その影響は子供たちにも現れている。

表面上は仲良くやっていたものの、開発工事で働く親を持つ孝子は、漁師を親とする他の子供たちから浮き上がりつつあった。グループのリーダー格である真姫(寉岡萌希、左)は、漁に出ず飲んでばかりの父親にうんざりしている。ムードメーカーの幸枝(武田梨奈、右)は、孝子が周囲から浮き上がらないように気を遣っている。

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がさつで明け透けに見える幸枝の優しさが良かった。持っている雰囲気がなんとも気持ちいい。光ってましたねえ。

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ある日、いつものように浜辺で遊んでいた少女たちは、砂浜に打ち上げられたリュウグウノツカイを見つける。美しくもグロテスクな姿の深海魚には「豊漁の兆候」「災いの予兆」という相反する言い伝えがあった。リュウグウノツカイは何を意味するのだろう。吉兆とも凶兆ともとれるが、ともかく何かが始まる兆しを指しているのではないだろうか。リュウグウノツカイが打ち上げられたことにより物語は動き出す。

砂浜で海を見つめる少女たち。「つくろうよ、私たちの国」という真姫の言葉に同意して集団妊娠計画は始まった。同意しちゃうかね、その話に。唐突すぎるだろうが。なぜ少女たちが手あたりしだいにセックスし子供を欲しがるのか、その動機は語られない。

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妊娠計画のリーダーとなった孝子(佐藤玲、中)の豹変が怖かったですねえ。それまでは開発工事に関わる親の子供ということで、引け目を感じていた。妊娠計画のリーダーとなり、妊娠していない生徒を恫喝するようになる。

「あんた、だいたい努力が足んないのよ。夜遅くまで起きてるし、好き嫌い多いし。本当に産みたいって思ってるわけ? あんた、明日から危険日だから一日五人(とセックス)ね。それできなかったらクビだから!」

クビて。ノルマありのセックスブラック企業じゃないですか。なにこれ。なんかの宗教?

根底にあるのは男への失望だろうか。漁村の男たちは、彼女たちを養う余裕はなく自分たちに失望している。真姫の父親は酔っぱらって冷蔵庫と相撲をとっている。幸枝の父親は漁に出たものの魚が獲れなかったことに絶望して自殺したように見える。クラスメートの男は崖から飛び降りてしまう。担任も、彼女たちには押されっぱなしである。とにかく男が脆弱で頼りない。

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女たちは、相手がホームレスだろうが老人だろうが構わずセックスをし、誰が父親だかわからない子供を妊娠する。子供ができれば父親なんてどうだっていい。浜辺で共同生活をし、大きくなったお腹を抱え、漁村を後にするところで映画は終わる。彼女たちの行く先には明るい未来と子供が待っている。たとえ老人になるとわかっていても、目の前に玉手箱があったら開けるべきだみたいな言葉が挿入されていた。考える前に跳べってことなのかな。

面白い部分もあったのですが、正直なところ肝の部分がわからないのでちょっとモヤモヤした。そして、少しフェアじゃないようにも感じた。

というのは、開発工事による漁村の漁獲量の減少から物語が始まる。これによって漁に携わる者の生活が狂っていく。発端は生活の話なんですよね。もし、生活が安定していれば大人たちもここまで頼りなくならなかったように思う。そして親が開発工事に関わっている孝子と他の生徒も対立せずにすんだ。

そこで、女子高生たちにこの対立を解消させたのが集団妊娠計画だった。これにより彼女たちは一つにまとまる。やがて、くだらない対立を続ける大人たちを見捨て、自分たちだけの国を作ろうとする。でも、そもそもの発端が生活のこと(漁村の開発工事)から始まっているのに、彼女たちの選んだ解決法は「村を出て、子供を産んで、わたしたちの国をつくる」というもので、生活に必要なお金などは考えていない。生活が事件の発端でありながら、生活を無視した解決になっている。あくまでファンタジーだから、厳密につきつめる必要はないのかもしれないけど。ちょっと気になりました。

公式サイトのコメントの一部に「十代の女の子は無敵なのだ」という言葉があった。確かにそうかもしれない。彼女たちはスターを取ったマリオのように輝いている。だが、その無敵状態の輝きはどれぐらい続くのだろう。20代でも無敵だろうか。30代でも40代でも? 父親が誰だか知らず、それを子供たちに恨まれないか。生活費はどうやって稼ぐのか。ノリで行った集団妊娠計画について後悔することはないのだろうか。また、つきつめてしまった‥‥。つきつめないって決めたのに。

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60分未満という短い時間ですが、とても変わった映画でした。クラスでマスコット扱いになっている男が良かったですねえ。浜辺に埋められて、翌日、孝子が浜辺に来たらまだ埋まっていたという。おまえ、一日埋められてたんかい。人間扱いされてない。クラスメートとの人間関係で悩み、埋められている男の横で泣く孝子。でも、助けないという。あれには笑ってしまった。

ちょっと癖のある映画で、好き嫌いが分かれる作品だと思います。少子化への提言とか、自立した強い女などという重いメッセージは感じず、彼女たちの輝きを映像にしたかったのかもしれません。彼女たちが、たいして意味もないことではしゃいでいる様子は、とても懐かしい気分になりました。その世代にしか出せないキラキラした感じがあります。輝いている。

2016年5月23日~2016年6月5日まで、GYAO!で無料配信しています。
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