04
2016

さよならミス・ワイコフ

GOOD LUCK MISS WYKOFF / 1979年 / アメリカ / 監督:マービン・J・チョムスキー / ドラマ、差別
MissWyckoff.jpg
被害者が迫害を受ける世界。
【あらすじ】
黒人にレイプされたことを知られ、差別される。



【感想】
1954年、アメリカ・カンザス州フリーダム。高校でラテン語を教えるイブリン・ワイコフ(アン・ヘイウッド)。生理が二か月なく、体調もおかしかったので医者にかかったところ早期更年期障害の可能性を指摘される。医者から男性との交際を勧められるも、彼女は、両親の歪んだ性行為を目撃した影響からか、誰とも性的関係を持たずに35歳になっていた。

クリップボード03

ワイコフは、差別意識が強かった当時としては珍しくリベラル。黒人と白人が同じ食堂で食事できるよう学校に働きかけ、共産主義を学ぶことにも賛成する。共産主義自体に賛成しているわけではなく、アメリカは自由の国なのだから、共産主義を学ぶ自由はあるはずだと主張する。真っ当な考えに思える。

クリップボード01 

ある日の午後、ワイコフはアルバイトの黒人青年にレイプされる。ワイコフの心理がわかりづらいのは、一度目のレイプがあったとき、警察にも校長にも届けなかったということ。これが本当に難解というか。恥ずかしかったというのもあるだろうし、犯人の黒人が、フットボールの奨学生で将来有望ということもあるのかもしれない。

それとも、黒人ということが関係するのだろうか。白人が黒人を差別してきた歴史があるので、黒人への贖罪として彼の罪を告発しなかったという。だが、黒人だから憐れんで届けないとしたら、それこそが差別ともいえる。

両親の変わった性関係(支配と隷属)の影響も大きいのだろう。ワイコフは両親の影響で、黒人青年の支配から脱することができないようにも見える。拒みつつも、流されるように何度も関係を持ってしまう。

クリップボード07

彼女はバス運転手に迫られたときも、一度は拒否するものの関係を持とうとする。そのとき、かかりつけの精神科医から「わたしに背中を押してほしがっている」と指摘される。バス運転手は妻子持ちということを知りながら、彼女は派手な下着を買い求めている。

ワイコフは自分で何かを決断するのではなく、力を持つ誰かに支配されたいように見える。犯人を告発しないのも、DVを受けている妻、虐待を受けている子供が伴侶や親をかばうことと同じなのか。支配から解放されたいのかどうかがよくわからない。それとも支配状態にあると、まともな判断ができなくなってしまうのかな。洗脳されているみたいに。

クリップボード09

彼女の事情や心境は複雑で、周囲は理解できない。共産主義者への弾圧反対には理解を示していた周囲も、黒人と関係を持ったことは許せない。共産主義者のほうが黒人よりもマシというランクがあるのが面白かった。ワイコフは、周囲から差別され、さまざまな嫌がらせを受けていく。ついには学校を辞めるところまで追い込まれてしまう。一度は自殺を考えるものの、薬を投げ捨て、決然と街をあとにする。バカのために死ぬことぐらいバカバカしいことはない。それで良いのだ。

X342.jpg 

これはアメリカ版のジャケット。あちらでの受け止め方は、こうなのかな。蛇とリンゴというのは、聖書の創世記ですね。アダムとイヴが、蛇にそそのかされて禁じられた果実を口にして楽園を追放される。犯人の黒人青年(蛇)がワイコフを性の悦びに目覚めさせた(禁断の果実)という意味なんでしょうけども。

でも、この読み方はちょっと違うような気がする。レイプされても、二回目からは感じてたでしょ? ということなのだけど、もしそれが支配されて正常な判断ができない状態にあるとすれば、蛇とリンゴのような考え方は間違っているのではないか。最後は彼女がみずからの意思で街を出ることを決断する。街を締め出されたという悲愴感はなく、自分からこんなくだらない街は捨ててやったぐらいの勢いを感じた。胸を張って出ていく。それが救いに思えた。しかし、この街の名前が「フリーダム」というのは皮肉が効いてますね。30年以上前の作品とは思えない出来でした。

関連記事
スポンサーサイト

0 Comments

Leave a comment