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2016

100歳の華麗なる冒険

Hundraåringen som klev ut genom fönstret och försvann / 2013年 / スウェーデン、ロシア、イギリス、フランス、スペイン / 監督:フェリックス・ハーングレン / コメディ
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爆殺おじいちゃん、行き当たりばったりで歴史を作る。
【あらすじ】
100歳のおじいちゃんが老人ホームから脱走。


【感想】
100歳の誕生日を祝われるはずだったアラン(ロバート・グスタフソン)は老人ホームから逃亡。バスに乗ってあてのない旅に出る。道中、ギャングの資金が入ったスーツケースを手に入れたことから、ギャングと警察に追われることになる。

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ゲラゲラ大笑いするような面白さとか、派手さはなく、実に淡々としたコメディなんですね。あくまでも控え目でクスクスするような笑い。冒頭、ペットの猫を狐に殺されたアラン。復讐に燃え、狐をダイナマイトで爆殺。おおお、過激なおじいちゃんよ。心温まる癒し系映画かと思いきや、意外と爆破しますね。若くして爆破で人を殺したりも。反省ゼロなのがよい。

主人公アランの現在と、過去の回想を行き来して物語はすすむ。アランは世界を変えようなどと大それたことを考えていたわけではない。ただ、爆破が好きなだけで成り行きまかせに生きてきた。そんなちょっと変わった、でもそこら辺にいそうな人間が歴史の節目に大きな影響を与え、歴史を作ってきたという。

100歳の誕生日にアランは老人ホームを脱走する。このね、ケーキにロウソクを100本さそうとするのは、もはや老人映画定番の展開ですね。こういった静かな笑いが作品全体にあふれている。

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アランの脱走について特に説明はない。老人ホームに不満があるわけでも、脱走に目的があるわけでもなさそう。ただ、なんとなくというか。もっと心の赴くままにやってみてもいいじゃない? ってことかな。

唐突に、アランにスーツケースの見張りを押し付け、トイレに駆け込むギャング。アランは、ギャングのスーツケースを持ったままバスに乗ってしまう。このギャング、実に味のあるいい顔面をしてましたねえ。

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監督のインタビューを読むと、映画には本職のギャングも出ているようです。この人、本職っぽいな‥‥。
「実は、元受刑者の社会復帰クラブのようなところでもキャスティングをしたから、元麻薬中毒者や、撮影後に再び服役してしまった犯罪者なんかがギャングの役で出演しているよ。」

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気の向くままにバスに乗り、たまたま降りた先にいたユリウス(イヴァル・ヴィクランデル、右)の家に立ち寄り意気投合。スーツケースを取り返そうとアランを追ってきたギャングをハンマーで返り討ちにし、ユリウスの家の倉庫に閉じ込める。だが、監禁場所の温度設定を誤ってギャングを凍死させてしまう。あららら‥‥、となる二人。

しかし、アランは一秒後には「まあ仕方ない」と立ち直るのだった。切り替え早すぎるだろ。淡々としたおかしみがいいですねえ。二人はさっそく死体を始末しに。人を殺した後悔が1ミリもないのがステキ。二人揃ってサイコパスなのか。

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みょうにすがすがしい感じがあるのはなんでだろう。先が短いし、どうせみんな死ぬんだから何やってもいいじゃん、という気楽さかな。この映画がうけたのも、多くの人が「こうしなきゃいけない」と信じ込んでいる窮屈さを、老人たちが軽々と打ち破ってくるからでしょうか。

「今はパーフェクトな人生を送らなきゃならないと感じてる人がたくさんいるように思う。」

また監督のインタビューの引用になってしまいますが、完璧でなければならないとか、幸せでなければならないという一種の強迫観念が窮屈さを作っているように思える。アランは、そういうのないですからね。人生の計画とか、人事考課で書かされる5年先のプランもない。爆破が好きだから原爆開発にかかわり、ロシアのスパイになり、東西ドイツの壁を壊すのに一役買うことになる。すべては成り行きまかせだし、考えたって仕方がなかった。今と違って、戦争がある激動の時代を生きてきたので、そもそも計画を立てるなんて無理だ。人生に計画をというのは、ここ最近の話のような気がする。

気づいたら、なんとなくやってこれていたというのが本当のところなんじゃないかなあ。

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アランは原爆開発にヒントを与えるという役目(もちろんフィクションですが)だけど、スウェーデンでは原爆について冗談で扱っても大丈夫なんですね。これもお国柄を感じて面白いところでした。

北欧の映画はどこかそっけない。観客を突き放し、無理にかまわないような感じで、そこがみょうに落ち着く。たまに観たくなる映画ですね。だいたい、100歳の爆破好きのおじいちゃんという設定がいい。いきなり狐を爆破するところに憧れる。わたしも100歳になったあかつきには、杖を振り回して隣人に襲い掛かるようなジジイでありたい。狂人である。

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